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単一な黒、内面はカラフル 2

いうなれば、受け継がれるうなぎのタレが我々。つまり、昨日の私はもう今日には異なる別の私によって書き換えられている。体と呼ばれる枠が歳をとり、内部の人格について規則的な改変が絶えず行われ、無意識にあるいは意識的に、『自分』を忘れてしまわないうちに外部に託して私らの記憶に植え付けたかった……。ツアーの趣旨を当事者は理解していたようです。主張を語った前筆者たちに手を下した、自らとは異なる主張であった、だから消し去った。しかも、当事者の論理に前筆者たちは含まれた、永遠に生きられるのです、当事者の内部で。崇拝の対象である私一人に始まり、私を愛する者、私が敬愛する物に移り、私を取り巻く環境と規律に組織から無形の精神へ辿り着く。怯える姿が目に浮かぶ、息を引き取る覚悟、堕落に靡く針を中庸に戻せなくて、強行に走ったのでしょう。そのときは、限定的に真実へと書き換わったのです。否定も肯定も私たちに関与は許されない、裁ける者は彼女、ただ一人。

 ……当事者の言い方を借りれば、このような表現が考えられる。便箋の色が警察関係者たちへの合図に当事者は想いを託したのでしょう。使用されるインクの種類は当事者の赤を除いて、すべて黒であった。これは霧散した赤色によって紫から始まる色のスペクトルが、被害者が所持していた便箋の色を重ねた末に訪れる、視認できる色を吸収しつくした黒色、という完結を表現したかったようです。本人にとっては本望、形こそ違え、あなた方が手に取る現実とそれ以外の両方に、当事者の求めた解が一連の刺殺事件を紐解く鍵に持ち上げられる心積もり、相当配慮に苦心した、と読み取れます。実際、当人は頑なに沈黙を守ることで成果を挙げた。首をそろえた捜査班の集合のはずが、取調室で繰り広げられ、手玉に取られた逆転の立場。いかにして自らが無能であるか、そのありようを事細かに一言一句読み上げられて……完敗、打ちひしがれ屈辱的な行為だったと思われます。その方々とは対照的に刑事さんたちは感情の制御を心得ている、助かります、まだ早朝、しかも新幹線の車内です。眠っている方々が大多数の室内環境、あなた方は北九州で降りますけれど、私は東京までの長時間を睨まれ、恨まれる、そんな乗車をはっきりと拒否します」