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単一な黒、内面はカラフル 2

 佐賀県警の刑事土井が腰を浮かせると共に驚きの声を張り上げる。即座に隣の刑事不破に頭を叩かれ、席に沈む。車内は多少、ざわついた程度で再び微振動と眠りを誘う走行音に主導権を快く手渡した。土井はそっと音量を抑えてきいた。丸い手を口元に添える。

「色が重なって黒になるのは、混ざった色そのもの性質だと思ってました。勉強になるな、色の反射かぁ、少々難解ですね、むふむふ」土井は頷く、理解には及んでいないが、彼は言葉を続けた。「それでは、アイラさんは、事件そのものではなくてですよ、そのう、当事者の行った手順は解き明かしたんでしょうか?僕らにはさっぱりです」

 九州ツアーは福岡の二DAYSを最後に幕を閉じた。本日は明けて、翌日の十一月一日。

 博多―東京間の新幹線はビジネスマンのくたびれた寝息が座席の各列で本日二度目の眠りを教示していた。アイラは最後尾の車両、それの最後列。飛行機の搭乗を警察の要請によりキャンセルし、彼らの個人的な資金元である財布から新幹線の六席、アイラとマネージャーのカワニ、スタイリストのアキの分が支払われた。席は通路を挟む二席にその二人が座る。彼女の隣席はギターが乗員である。前列の席を進行方向とは間逆に倒し、二人の刑事はアイラと対面する形で乗車に踏み切る。土井の膝にはビニール袋が置いてあった。

 アイラは重たい瞼を無理に引き起こすことはせずに従い、土井の問いかけに応えた。