コンテナガレージ

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単一な黒、内面はカラフル 2

「では、一件目はやはり管理人の仕業ですか?」細い目で不破が尋ねる。

「どちらに転んでしまっても、良かった」

「どちらって、あの」土井が今度はきく。「自作自演以外の状況があるとでも?」

「本当に犯人と鉢合わせた」アイラは軽く微笑んだ、必死な彼らはおかしい、滑稽という意味だ。仕事の一言で片付くとしたら日々の生活に流された脳疲労が原因だろう。「身の危険を感じたか、管理人としての使命を果たそうとしたのかは不明です、通報のためにとっさに体が動いたのかもしれませんからね、あるいは顔見知りがその場に死体を作り出す瞬間だったかもしれない。とにかく、管理人はホールを離れ、階段裏を通り、正面入り口の右隣の部屋に駆け込み、受話器を取った。端末を所持していたかどうかは、おそらくは調べられていません。持っていたとしても、気が動転していたことと、身を守るために部屋に入った行動は建物内の電話を使用した事実、これが正当化の役割を補って余りある。また、死体の状態に警察の質問は集中するでしょうし、自宅は二軒隣でしたね、一通りの聴取を受ければ、逃走の危険性がない限り自宅に戻ることは容易だった、と考えられる。よって、かくまっていた犯人の、逃走の手を助けた可能性は残りますね」

「僕たちはまんまと作った道を歩かされていた……」しぼんだ土井の声、彼は当たるようにコーヒーを傾けた。「管理人をいくら調べても証拠は出てこないはずですよね、凶器や被害者との関連を重点的に調べてた僕たちですもん、姿をくらます架空の人物かもしれない犯人との関連性なんて、どう見積もっても現実的な捜査対象には引きあがりませんもんね。けど、管理人が犯人の場合、死体に寄り添った人物は存在しなかった。いや、予め殺されていた現場に立ち会っただけのことかもしれない。なんだか、どれも予想ばっかり」