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兎死狐悲、亦は狐死兎泣 5-3

 光に包まれる、あれれ、呟く傍から体が燃え尽き、バルーンも咆哮ばかりの噴射装置も大きな籠だって見る間無残に跡形は細切れ紙片に空を飛べた。満足だろう、そう言った。言われたのか言ったのか、定かではない。とにかく誰かが耳元か体の内側で僕に聞こえるぐらいの音を聞かせたんだ。だったら、うん、ぼくはぼくでなくても、もしかしたら良いのでは、とこう思える。
 あの人が見つめる、こっちを目と鼻の先に彼女の鳶色の瞳が二つ透明な玉が。
 体が動いてた、動いてしまった、というほうが正しいか。唇が一つに、形を作った。夢であってくれるのなら、とっくに僕の形は消え去って崩れ去ってるのだ、唇の柔らかい感触が、ありありと脳内に分泌物の発生を促して神経と隣り合うそれらとをつなぎたい一心で快楽を伝えた。
 目が開いた。風が流れた、半分が痛む。
 鈴木は日に焼けた右腕を翳す、ひざまずく日井田美弥都が左側にこちらを接触など彼女の貞操が失われていたともまるで思わず、平静に淡々と彼に問いかけた。返答は可能だったらしい、随分と久しぶりの感覚だった、会話が億劫に思えた。日焼けした赤い肌はびりびりしびれて、解けるようにそれは痛みを伴って僕に僕を還した。真四角の空はもう星を湛える時刻だった。