コンテナガレージ

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仕事(フリーライター)、日常、小説、その他諸々

兎死狐悲、亦は狐死兎泣 8-2

 昨夜美弥都は『ひかりいろり』を今一度遠矢来緋を従えて室内を調べた、係員の本分を彼女はまっとう、突発的なドアの封鎖に体を廊下と室内にまたがって遮断を防いでいた、システム管理に事情は伝達済み、警報のみを一時的に解除していた。レールを左へ滑る、勤務先のドアも同様左に収まる。利き足の配慮だろう、左足を軸に前に踏み出す右足、それに連動する右半身を先に滑り込ませる。右に開いたとて体全体が入りきる直進が可能な位置にドアを引く。遠矢が言っていた、ドアの開閉については管理側の都合が悪く、不具合の要因を種を増やすわけにゆかないのだそう、目下鋭利半開きのドアを引き起こした原因を探す、係員たちに通告がいきわたっていればアラーム音の解除でどうにか我慢を、ドアは人を挟みつぶさないセンサーが取り付けてあるとのとこで加圧を感知するとドアは一旦開き、そして閉まるを繰り返すだろう、と。
 体を張った甲斐がなかったといば、語弊がある。痕跡、それらしき疑わしいは傷跡すら見当たらなかった。ただ、室内の石は定期的に磨いている、と遠矢は何気に零していた。衣服と擦れ表面が凹凸に削られる、通路に室内の音は漏れ聞こえないものの、過ごし方は各自それぞれ、激しい動きに興じる宿泊者もなかにはいるのでは、とも付け加えた。
 天窓の写真はファックスを受け取った直後に美弥都の端末に送られた。画像と荒れたファックス文字、見方によっては端末を操る指の機能は回復、文字を打ち込むことはままならない、読解力を美弥都に頼った踊る文字に情報を託した、と彼女は鈴木の状態を推察した。
 足をベッドに伸ばす、枕をお腹に乗せてその上に資料のファックスを広げる。静か、石は昨日に比べ迫り来るように感じられた、硬質と自重が体に触れた場合を計算しては答えを消し去るのかも。彼女は係員たちの欠落する標準的に備わる人の機能が利用され、犯行が行われたのでは、と意識について及んだ考えが連想を促す。
 ……鈴木が襲われる、真相に迫る捜査だった、方向性は、正しい。美弥都はファックスを読み進めた。
 連なったA四用紙六枚に渡る一代絵巻は三枚目の二行目に起点が登場、あっさりと読みにくい文字を取り払った、内容が一変する。おそらくおかしな内容を誰に伝えるか、送り主鈴木が手渡したい相手、つまり私がはっきりわかりやすく、それでいてチープな文面を彼は選んだ。用紙を手渡す家入は全文に目を通したかもしれないが、あらかじめファックスを送る事を知らせており、かつこのホテルはプライバシー保護が特色、人気を博す生命線と世間の評価は高いらしい。係員は最後まで読まずに連なった用紙を畳み封筒にしまいわざわざ封を閉じて手渡した。送信前にフロントの家入に連絡をいれることで、この仕掛けは成立をみた。無論文面が見られてしまった可能性は、残されている。