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兎死狐悲、亦は狐死兎泣 11-3

「あの日、同業者とのお見合いを土壇場でキャンセルしたんだった。約束は親が勝手に日取りを決めて前日に……用意周到よ。私の休みを、親の病院が勤め先だもの、知ってて当然。半年前兄さんが誕生日の記念に取ってくれたのを無下にもできない、それで宿泊を選んだわ、そう予約を先に休みをあわせたの。部屋はたぶんこの部屋。フロントで鍵をもらって、ああ、誰かとすれ違った。ダンボール、引越し業者の白い箱を持った人が邪魔で危うくぶつかりそうで、謝罪を求めたんだ、そうそう、フロントの係員が変わりに謝ってたけどぶっきらぼうで口ひげの生えた配送係を叱り付けてやったのよ、めっためたに。何か運んだかって?お客の荷物でも預かったでしょうよ。お土産は荷物になって困る、帰りは手ぶらでいたいもの。ほとんどがレンタカーだってこと、道内のお客なんて高が知れてる。いい?、第一次産業の従事者が見飽きたそこら辺に転がる広がる、なんなら自分たちの敷地内と大した違いを見出せない『ひかりやかた』は論外、論外。そういう人たちはまだ海外をバカンス先に選ぶの。S市民の富裕層であれば多少理解はしてあげられる、共感は無理。私?端末の電源を切れる場所を国内で探したのよ、私飛行機苦手だから、さっさと新幹線がS市まで延伸してくれないかって焼きもしてんのよ。……喋ろっていうわりに断線も許さない、それよく聞き手が勤まること。あら、おいしいわ、これ。勘違いしないで、正直な感想よ。あなたに気を使って気をされていったのとは違いますう。……うん、まあまあね、これどこの豆。……そう、個人でも買えるのかしら?ええそうして、そうねフロントに伝言を頼んで、それか私がまた店に寄ったときにでも」咳払い。