コンテナガレージ

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蓬 麻中ニ生ジヨウト助ケナケレバ曲ガリクネル 自ズトハ偽リ 2-5

さて、密室の説明に戻ります。ええ、ですから言い終わりを待つよう最初に確認を取ったはずです。どうぞ。それは鈴木さんの指摘、石を貼り付けたドアのことでしょうかね。ヒントというよりきっかけが相当です。中身が詰まる石材と削り落ちる石塊、槌を打つ耳につく甲高い音を理由もなしに聞き取ってしまう状況が標準であった、ホテルの地下に足を踏み入れたとき刷り込みはこちらも忍び寄っていた。これから話すつもりです、少々催促が早い、あなたにしては上出来。褒めているのです、私が褒めるのですよ、そのことを今一度お考えになってもらいたい。二人目の殺人、ええ殺しと言い切ります、死亡した小松原さんは『ひかりいろり』に入る直前にこの店、カウンターにいました。数時間をかけた圧迫は室内ではなく、屋外で施された、と見当を立て三人目の鈴木さんのケースが未遂に終わることで、はい、屋内での犯行は最後の鈴木さんのみに当てはまり、死亡した前の二人はやはり屋外から運ばれたという断定が可能でしょう。そればかりか死後に現れた死斑に目を凝らす時期の遅れからも事件のとっかかりはつかめていたでしょう。死体、半身は死斑の有無が確認できない、さらに圧迫を受けた背面が押しつぶす静脈は血液を押し出し着色を妨げる、残念ながら死斑を手がかりに死亡時刻の算出を期待されては困る、鑑識はもらしていたそうですね、鈴木さん。