コンテナガレージ

仕事(フリーライター)、日常、小説、その他諸々

蓬 麻中ニ生ジヨウト助ケナケレバ曲ガリクネル 自ズトハ偽リ 4-1

 ぴらひらと分厚い業務日誌を飛び出す紙を鈴木は目ざとく見つけた、到着までに通過する信号機は残す三機。一行目を読み進めた直後に鈴木は「聞いてしまって良いのか?」、と美弥都個人に送られた手紙に動揺を見せた、無意味なクラクションが短く鳴った。警察関係者は内容を非公式ではあるが知っておくべきだろう、運転手の警告に逆らい彼女は音読を続けた。
「私なりの意見?行方知れずの安部さん、案外近くに潜んでいるかも分かりません。多孔質、吸水性の高い石に囲われる、自家融解と体内外の細菌による腐敗等の匂いを発するにはもう少々時間がかかるでしょう、一階通路は肌寒い二十度以下に室温を保つ、ええ、品質低下の速度を予測すべく午前、正午、午後、夕刻と気温を測りました。もっとも寒いと感じるのは夏から秋にかけた一時期、秋風をしのげる通路は月末に重宝されるでしょう。心情ですか?横っ腹が欠けた像は執拗に迫る小松原さんの要望に耐えかね、兎洞さんが訴える救援信号だった、というのはいかがでしょう、お気に召しましたか。手を取り合った仲、またもや隠し切れず失態を犯し視覚欠損をお客に見抜かれ、弱みを握られた。誰もが公に意見を発する機能を持つ時代です、一言がホテルの経営を狂わせてしまえる。小松原さんは二年前の事件当日もホテルに泊まっていた、被害者と兎洞さんの関係を目撃していた可能性もある。まあ、二人にとっては二年前の犯行を完璧に整える二件目でもあった、短時間に半身がつぶれた死体を出現させ、ドアは正常、開いた形跡もなし、天窓への疑いは強まり、二つの事件を混ぜて考え迷路に嵌る。開錠の記録は残されていますよ、入室前屋外にて殺害、運ばれ中に小笠原さんは置き去られた。室内側、ドア開閉については体重の加圧によるセンサーが受け持つ、しかも記録には残りません。捜査権を使い『ひかりいろり』を捜索したときに立ち会った兎洞さんはドアが閉まらないよう体を差し入れた、一定時間後自動的に閉まり加圧センサーが彼女の片足を検知、打ち寄せる波のようなドア。出た者は中に入る、利用時間内であれば用事を済ませ部屋に戻る、という意味です、おわかりでしょうか。