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店長はアイス 恐怖の源4-4

「ああ、何だそっちね。うん、知ってたよ。いやだなあ、種田。まじめにとるなよ」
「それにカバーがついていませんでした」大嶋は忘れて声を張る。「それに文字が上下逆さまに印字されていたのですよ!」
「逆さま?」鈴木が鸚鵡返し。熊田と種田は情報を掬い取り、考えることを極力抑える。
「ええ、表紙の向きでページをめくると文字が逆さまで読めませんでした」
「誤植レベルを超えた本が市場に流通してるのはおかしいですよぉ」大嶋の狂言と鈴木は考えているらしい。大島への視線に疑いを含ませる。
「事実ですから、私に言われても……」大嶋の視線がテーブルに落ちた。
 鈴木の片腕は地面を這うように前方、大島の近くへ置かれる。「その本は大島さんが言う男が持ち去った可能性がありますね」鈴木の首が縦に細かく振られてる。
「私の言う事を信じてくれるのですね?」
「現物を見るまではなんともいえませんね。あなたが現場にいた、という事実もまだ明らかになっていないのですから」
「名刺があって、それで刑事さんたちが私を訪ねてきた。これが証拠ですよ」
「大嶋さんの名刺はあなたでなくても手に入れられますよ、同僚、上司、部下、取引先とね」
「嘘ではありません、信じてくださいっ!」目をつぶる大嶋が咄嗟に種田の手を握った。冷たい種田の瞳が大島を捉える。彼女は口を開いた。
「現時点の状況は通報者の行方が判明。その人物から事情を聞くまではあなたの発言に否定も肯定もできません」種田は手元を見る。「手を」
「ああ、すみません。あのその、セクハラではありませんので」
「わかっています。熊田さん?」
「ん?」眠そうな熊田の返答。
「考え事ですか?」
「いや、なんでもない」熊田の視界に女性。スーツ姿の女性が頭を下げる、その女性は大嶋とテーブルを離れた。
「作り話でしょうか?」小声で鈴木が聞いた。
「わざわざ話す必要性があるだろうか」熊田は腕を組んで言った。腰の位置を変える。
 小走りで大島が席に着いた。話は一分足らずだった、時間的に女性は大島に用件を伝えただけで込み入った話ではなかったらしい。大嶋は戻ってくるなり早口で言った。「申し訳ありません、急ぎの仕事でして、ここで失礼させていただきます」