コンテナガレージ

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店長はアイス 恐怖の源4-6

「だそうだ」
「じゃあ、別の場所とか。高台は二、三百メートルほど続いていますよね、そのどこかで落とされてあのベンチに運ばれてきたんです」
「お前は他殺と考えているんだな」
「どうでしょうか。決め付けるのは良くありませんね」
「はっきりしないと、捜査の判断がぶれるぞ」
「僕の意見を取り入れてくれるんですか?」鈴木が前列に身を乗り出す。
「突き落とした人物と運んだ人物は同一でしょうか?」種田が鈴木とほんの数センチの距離で意見を返す。咄嗟に鈴木は身を引いた。熊田は車線から視線を車内に移し二人の表情を捉えた。鈴木にだけ気まずい空気が流れているようだ。
「おい、顔が近いよ」
「すみません、片方のコンタクトを今日は落としてしまって。見えづらくて」
「そういえば、眼鏡はどうした?」
「フレームが破損しました」
「破損って一体なにをやっていたんだ?」鈴木がきく。
「答える必要はありません」
「コミュニケーションでしょう!狭い車内なんだから、もっとオープンに振る舞わないと。あっと、別にその熊田さんの車が窮屈で足も満足に伸ばせないなんて言っていませんからね」
「わかっている。それで?種田の話の続きだが、突き落とした人物と運んだ人物が異なるというのは?」
「現場から数百メートル先では長屋の海産物や加工品、観光客向けに構えた店舗が商売をしています。死体が店舗の裏手に転がっていたのなら、他所へどけるという心理が働くのは危機回避のメカニズムです」
 種田の意見に鈴木が異論を唱える。「けど、死体だよ?おいそれと触れることすらできないと思うけど、気持ち悪くて」
「自宅前に猫の轢死体が無残な姿で放置されていたら、鈴木さんはどうしますか?」
「保健所に連絡する」
「死体だとわかりそれが死後まもなくで飛び散った血や内臓が視認されない状況、つまり外傷が見当たらなく、触れても手が汚れないのであれば同様に連絡を入れますか?」
「うん、たぶんね。これって何の話?」
「隣家との境目にその物体があったのなら、どういった行動をとるでしょうか?」鈴木の疑問に種田は取り合わない。運転の熊田も黙って聞いている。「鈴木さんは忙しい、家をすぐにでも出て出勤しなければならない状況ですよ?」
「誘導尋問だよ、答えたくない」
「一般的な心理として、極力無駄な行動を避ける傾向が顕著に表れる。しかも、薄暗く視界が整わない状況ならば、人の視線を気にすることが省かれて、行動のハードルが下がる。そして猫を隣にずらすのです」
「露店はベンチからかなり離れているんだ、両手で抱えたの、死体を?」
「標準的な身長と体型でした。男性ならば無理なく運べるでしょう」