コンテナガレージ

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店長はアイス  過剰反応1-3

 本を読みながら食事を続けた。行儀が悪いと叱った父親を思い出す。新聞を読みながら朝食を食べる姿に私は指摘しなかった。罪悪感か……。紀藤香澄は天井を眺め、目を細めた。
 最後の一口、餃子を平らげる。味噌汁を飲んで、漬物でしめて、また本を読み出そうとすると視界に私のかかりつけの歯医者で受付をする女の子が映った。男と二人である。咄嗟に私は顔を隠した。意味がないことそれに見られても構わないとさえ決断した私だったのに、また雑音と店内の話し声が私に響いてくる。しびれた足に構わず、店を出た。背中を見せておけば私だとは気づかれないし、わからないし、見かけたと尋ねられても白を切りとおせるさ。おつりをもぎ取るようにして、手に握ったまま、バタバタと靴を履き、窓際の彼女に見られないよ、駐車場をそっぽを向いてそちらに何かあるかのようにして車に滑り込んだ私。決めたのに、約束したのに。また、同じ事を繰り返している。一人だからだろうか。ううん、わたしの思考パターンがいけないの。組み直さなきゃ。先週も泣いていたっけ。歳のせいだろうか。全部、何かのせいにする癖もやめよう。可愛いって無意識で言っているのと大差がないもの。心も意味もアクセスも本心でも複製みたいで嫌気が差す。
 家に帰る車中で、本を忘れた事実が蘇った。けれど、戻れはしないか。
 道がいつまでも直線だけでカーブも高低さもなかったら、私は眠ってしまう。
 だから、信号も他の車もくねくねした道も存在してくれるのだ。すべては私のため、そう思えたら軽くなった。食事の分だけ重くなったけど、いつかは消えてくれる重さなのだから、それまでは手をつないで付き合ってあげる。
 サングラスを掛けてみた。まぶしいという理由でね。ファッションと対向車は思ってるだろう。これも思い込み。それよりも、いいや、もう比較の対象ではないのだ相手は。眩しさが軽減されたことが行動に正しさを与えた。
 渋滞?大いに結構、これも私のストーリーの一部なんだから。