コンテナガレージ

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店長はアイス  過剰反応2-1

「種田の言い分を信じて待っていますけど、一向に帰ってくる気配はありませんね。お腹すいた」鈴木はスーツの汚れを省みずに足を投げ出す。ちょうど熊田の頭上、高台、野次馬がベンチを覗いた場所で鈴木は額に手をかざし海面に目を配っていた。熊田たちは紀藤香澄のマンションを出て現場にて第一発見者大嶋八郎が名刺を託した通報者の男の帰還をヨットハーバーで首を長くして待つのだった。かれこれ現場に到着したのが三十分前である。さすがに昼食を摂らないと鈴木の体力が持たないだろう。熊田は種田に昼食の買出しを頼んだ。高台、道路を渡ると目の前がショッピングモールである、細かな注文は控えた熊田である。過度な指示は控えるべきだと、彼は常々考えている。種田には漠然とすぐに食べられるものを要求した。
 沈んでは浮かぶ海面をなんともなしに眺める。タバコをくわえた、携帯用の灰皿も取り出す。海沿いは風が強く、煙で嫌悪感を抱かせる心配もないだろう。欠点は点火に多少の苦労を強いられるぐらいだ。
「種田はどこへ行くんです。トイレですか?」
「昼飯を頼んだ」
「忘れているんだとばっかり思っていましたよ。夕方四時でやっとご飯にありつける」
 熊田は振り返り、体をねじって見上げる。「まだ見えないか?」
「大型船、フェリーでしょうか、一台大きいのが見えます」鈴木は手のひらで日差しをさえぎる。「他には、見当たりません」
「革靴の底に砂利がびっしり挟まっているぞ」歩きやすさとクッション性を生み出す溝に細かな砂利が窮屈に居座っていた。
「あっ、ほんとだ」鈴木は片方ずつ底を確かめると、最初は爪でそれからは家の鍵を取り出し石を除去する。
「鈴木さんここにおきます」種田が音もなく現れたので鈴木はバランスを崩す。
「あああう、あああっと」なんとか落下を免れた鈴木は、悲痛な叫びで訴える。「驚かすなよ!落ちても、死なないけど、危ないだろう」
「二回も呼びましたけど」
「えっ、そうなんだ」近距離で種田と視線を合わせるとたじろいでしまう鈴木は、言い返す勢いの熱は収束を余儀なくされて、怒りの蕾は開かずにしぼんでしまった。種田は階段を降りる、熊田にも昼食のハンバーガーを手渡す。
「すまん」
「おつりです」