コンテナガレージ

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店長はアイス  過剰反応2-4

「港に着いた時間は?」
「さあ」山田は幅広の方を竦める。
「正確でなくても構いません。大体で聞いています」
「六時前だったと思う」
「あなたはここで誰かに会いました?」
「いいや、一人だ。誰にもあっていないし、誰にも見られていない」山田はそこで引っ込めた首を種田の眼前に差し出して言う。「だぶんな」
「紀藤香澄、この名前に聞き覚えは?」
「ない」
「最後に、名刺を渡した男性があなたにベンチの下で拾った本もあなたに渡したと証言しています。本は持っていますか?」
「あるよ」無造作に男は尻のポケットから文庫本を引き出した。素手で触ってしまっている。「ほら」
「もう結構です。お帰りになっても。それとまた何かあればお話を聞き行きますから。私の名刺です。こちらにご連絡を」
「いらないですよ。警察の番号ぐらい覚えていますから」男は口笛を吹いて熊田たちに軽薄な笑みを送り、地面をすりながらデッキシューズをかろうじて浮かせて歩いていった。
「なんですかあれ?」鈴木の苦い顔、右半分が引き攣って呟く。「金持ちって横柄ですよね。クルーザーを持っているのが偉いなんて、まあ、いいなあ、とは思いますけど態度は改めないと人としては最低です」