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店長はアイス  過剰反応3-1

 捜査の権限が末端の署員である熊田たちの課へ譲渡される要因は、事件の異質さや複雑さ、現在抱える事件で手が回らないなどが考え付く。がしかし、とりわけ今回の事件の異質さはあまりというかほとんど感じられなく、無味無臭に近く、熊田たちにはまずもって捜査権を与えられない事件に分類される。他の事件との関連性があれば、なおさらこちらに捜査をさせたくはないと、思うのが上層部のわかりやすい、いつもの態度だ。では、手が足りないのか。いいや、連続殺人事件の犯人は、先々週に捕まえた。喫煙所でも他部署の面々に事件下特有の厳しい気配は感じなかったように思う。こうして今も、喫煙所内ではタレントが起こした不貞についてあれこれと二人の署員が討論に熱くなっている。暇なのだろう。二本目の煙草が消え入りそうな時にドアがあく。ゴシップに花を咲かせる二人は二分ぐらい前に出て行った。
「おつかれさまです」相田は鼻の頭がうっすらと赤く焼けている。
「鑑識から情報は?」
「まだのようです。今日は暑いですね。かないませんよ、夏にスーツは」相田はハンカチで顔と首元を拭う。缶コーヒーを半分ほど一気に飲み干して、風呂上りのビールを飲んだ一口目の言葉にならない感想と同様の声を出した。
「まったくだ」
「熊田さんは汗をかかないタイプですか?うらやましいです」相田は熊田の涼しげな顔をつきを見て、ため息をついた。
「体重を減らせば良い。一番の近道だ」