コンテナガレージ

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店長はアイス  過剰反応5-2

「弁当はやめましたか?」四十代の副室長は年齢にそぐわない豊かで艶のある頭髪は多くの中年にひがみの対象であった。大嶋もかつて何度か心の中で悪態を付いた過去があるが、現在は有能で若々しい部下という認識で考察をストップさせていた。考えなければ足りない私との比較を行わなくてもいいのだ、と大島は自身を律する。

「家を出る前にひと悶着があってね、大変だったよ」

「娘さんですか、それとも奥さんとこれですか?」副室長は手首を回転させ人差し指同士でバツ印を作った。

「警察」

「警察?」正面の彼は首を傾げた。首から提げたストラップの赤はネクタイよりも派手だ。

 大嶋は味噌汁を時間をかけて口に含み、顔を近づけ、呟く。「死体を見つけた」

「死体?どうしてまた」

「さあ、私にも何がなんだか。ベンチに最初は座っているのかと思った。けど、近づいていくと人形みたいに動かない。首の曲がり方もおかしかった。いまでもまじまじと死体を見た自分の大胆さに驚くよ」何か大々的な事業や記録更新の感想をインタビューアに聞かせるように語った。第一発見者に与えられる特権は、マスコミへの気取った応対である。家族がもしもニュースで流れる饒舌な彼を目にしたとすれば、今後一切娘とは口を利いてもらえず、少ない小遣いも剥奪された弁当にその大半を奪われることだろう。大嶋はよぎった想像を振り払って、続ける。「ただの偶然さ」

「ぶっそうですね。自宅の近辺ですか?」

「ショッピングモール、駅の近くだよ。ヨットハーバーが見渡せる場所」

「朝から散歩ですかぁ、私はまったく運動には興味がなくて」

「私も犬の散歩のついでに歩く程度ですよ」

「犬を飼っているとは初耳です」

「柴犬。娘がどうしてもってせがむから仕方なく。しかし、散歩は結局私が行っている始末だよ」

「女性が死んでいたとは、……朝刊の記事には載らないか」

「夕刊になら載るだろうな」大島は箸を置く。「それより、午後の会議をプレゼン後に開く必要があるのか?一日ぐらいチームに休暇を取らせても罰は当たらないだろう。これまで働きづめ、今日は早く帰って頭をすっきりさせれば、次の新しいアイディアを想像しやすくなるとは思わないか?」

「そうですね、だったらテーマ提起だけは行っておきましょう」副室長はホットドックを頬張る。「男が食べるスイーツ」

「二十代向けに売り出した商品の手ごたえは今一つ。売り上げは伸びなかった。隙間を狙うのは、正直賛成できないよ」

プライベートブランドは低価格、高品質それに売上・顧客データを丹念に照らし合わせたダイヤの原石から確実に買われる商品を製品化できる強みがある。真っ向勝負は分が悪い。傷だらけになるのは私たちでしょう。だからこそリスクが少なく、より確実に競争相手の盲点を付いた商品を開発するべきなのです」