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店長はアイス  過剰反応8-1

「事件の発覚の翌日に別の死体が発見されるのは前代未聞ですよ。上層部に睨まれなきゃいいですけど」半袖の鈴木が手を合わせる。屈んだのは死体を、顔を拝むため。手を合わせたのは単なる儀式でもちろん、死者の顔を覗く許可を得たのではない。日本人であることの。あるいは刑事としての証。
「警備に落ち度はない」相田は鈴木の倍の汗を掻いている。この時期のハンカチ兼タオルは彼の必需品だ。
「熊田さんと種田はどこに行ったんでしょうか?出て行ったきり帰ってきませんでしたもんね。もしかして……」
「余計な詮索はやめろ。くだらない」
「だって、相田さんも二人の関係を怪しんでるくせに。いつも言うのは僕なんですから、本来なら褒められてもしかるべしなんですよ」
「使い方が違うぞ」相田も鈴木の横に屈んだ。死体はシートで包んだ状態で、ベンチの約一メートの脇、アスファルトに寝かされていた。鑑識の到着は刑事たちよりも迅速であった。それには理由があり、彼ら鑑識課の署員がこの付近に住まいを持ち、サイレンの音にいち早く反応し、自家用車で署に急行して車両を持ち出し作業に取り掛かった、というわけなのだ。鈴木は遺体の頭部、ジッパーをゆっくりとかまないように滑らせつつ、左に引いた。顔の部分、死体の正体を拝見する。
 鈴木は顔を一度前に、死体に近づけ、「うん?」と言葉を発し、また顔を引いて今度は距離をとって死体を見つめる。どうみても、顔を傾けても昨日見た顔に間違いはないと思う鈴木である。
「あの、この人ってもしかして……」
「大嶋八郎だ、第一発見者の」