コンテナガレージ

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店長はアイス  過剰反応10-3

 先ほどのコンビ二と百メートルの近距離にありながらも駅前にもライバル企業のコンビ二が営業をしていた。しかし、数ヶ月前の朝に特徴的なブルーの店舗が真っ白の外装にはや代わり、夜には既に内装までが撤去されていた。灯りがなくなると駅前はさらに閑散として、駅前の街灯に虫が集中的に周囲を飛び交う。

 美弥都は改札を抜けるとベンチに座った。駅舎に女子高生が一人いた。外を見ていた。たぶん、迎えの車を待っているのだろう。歩けばいいのに、と思う。それほどはなれた場所に住んでいるとは思えない。彼女よりも親のほうが夜道を歩かせる娘を案じて迎えにやっきになるのか。子供は親を利用する。持ち駒は最大限利用すべきだと、誰に教えられることなく、感覚的に行動を選択。無意識だから悪意とは思っていない。親も応じてくれる。美弥都は子供の事を思い出さない。目の前は下りのホームと三本の線路、弧線橋。考えは捨てた、どうせ手に入らない。寄り添ってみたい願望は情意を抜き取って情報のみを保持すると、あの時の記憶の蘇りにも夜はベッドに入って数分で眠りにつける。

 アナウンス、電車の到着、乗り込む。乗客はほとんど降りない、乗車は私だけ。一人掛けの席が空いていた。正面は壁、斜め上の縁に収まった広告。見て欲しいといわんばかりの価格と時間だ。何度も無意識に脳にうっすら記憶をここ見て選択を迫る時に思い出させる算段か。景気が流れる。窓に映る私の顔。

 大きくなっただろうか。何を食べるんだろう、好きな色は?絵は書くのか。最初にしゃべった言葉はなに?私の名前?柔らかい肌。透明な瞳。真っ直ぐな眉。頬のえくぼ。膨らんだ頬。音が好きだった。私の歌声を聞くといつもにこやかにそして言葉にならない音を発していた。電車が止まる、すぐにまた発車。次の駅で降車しなくては。乗り降りは毎日のことではない。繰り返し、無意識の動作というものの意味がわからない。そう自分で思ったのに……。お客はアルコールで記憶を失っていた、私にはできない行為だ。思い出すだけ無駄。車窓を眺めて窓枠に肘を突き、黄昏ているのはどこのどいつだろうかと問いかけた。区画整理の住宅街、びっしり線路を道路を隔てて立ち並ぶ。電線が視界を遮る。私が降りる駅はひとつ前の駅だった。けれど、乗り過ごしも悪くはない。良いと言わないだけ。スポーツ選手のインタビューみたいだ。