コンテナガレージ

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店長はアイス  過剰反応10-5

 湯温が下がり適温に。中挽きの粉を二杯、そこにお湯を注ぐ。蓋を閉じてタイマーを四分にセット。この煙草が灰に変わる頃がちょうどいいか。一本目の煙草をステンレスの灰皿に押し付ける。換気扇をオフに。タイマーがお知らせ、軽くドリッパーごと攪拌。大き目のカップにドリッパーを据えてストッパーを解除すると、コーヒーがカップに注がれた。約二杯分の目盛りにお湯を注いだ。このカップにはちょうどいい量だ。コーヒーと煙草と灰皿、本を持ってリビングに移った。出しっぱなしのお風呂のお湯は溜まれば自動的に止まってくれる。この家の持ち主は水周りに力を入れていたため、洗面所、トイレ、お風呂、台所は最新の設備が整っていた。どういった経緯で家を手放したのか、私には興味はまるでない。 

 直に座って煙草に火をつける。本を手に取りぱらぱらとめくり始めた。コーヒーと煙草が気兼ねなく吸える環境だったら、周囲の雑音は耳に届かない。読みかけの小説が思い起こされた。またの機会にしよう。

 八十ページ、しおり代わりに煙草の包装紙を折りたたんで挟む。居場所を追われた残りの二本を灰皿に載せて、美弥都は立ち上がり、風呂に入った。

 短時間で風呂を上がると、温くなったコーヒーを仁王立ちで飲み干す。台所でもう一杯をセットする。その間に煙草に火をつける。髪は自然乾燥に任せる美弥都である。髪は艶やかで潤い、表面は乾くと光の輪が作られる。特別な手入れ、主に女性が行うような作業を彼女は一切していない。汚れはお湯で落ちる。髪は黙っていれば乾くのだ、と言うのが彼女の言い分だ。風が冷たくなったので、窓を閉めた。首に巻いたタオルの私が窓に瓜二つの姿。カーテンを閉めて、一人を削除する。

 煙が室内に散る。コーヒーをカップに注ぐ。定位置に座り、再び本を手にし、その後ベッドの中でも寝転がりつつ、読みふけった。一度手にすると最後が気になるのだ。この本はそれでも、数ページで一つのお題を語っているので、いつでも読む手をとめられた。なのに、読み続けたのは作者の思想を彼の言葉に浸って考えていたかったから。これでしばらくは、この本についての考察に時間を割くことを余儀なくされる。大丈夫、消化し切れていない箇所はしるしをつけている、休憩時間と店の暇な時間帯に取り出すとするか。美弥都は口を開いてあくび。消灯後、明日の起床時間を確認し、瞼を閉じた。十数秒で彼女は眠った。