コンテナガレージ

サブスク・日常・小説の情報を発信

店長はアイス  死体は痛い?3-2

「ええ、そうなんですが、何か思い出されたことはないかと思いまして」

「あの、店内では話しにくいので、どうぞうらへ」

「そうですね」 

 倉庫に通された鈴木と相田は、中央の椅子に座るよう促された。人の気配がする。ドアから左手奥にはぼんやりと明かりが漏れていた。摩擦音も聞こえる。

「店長――」股代が呼ばれた。彼は頭を下げて奥に姿を消す。相田は機嫌が悪そうだ、眠っていてまだ完全に意識が覚醒していないのだ。こういうときは無駄に問いかけないのが一番良いのだ、いつしか知れたこと。長い付き合いに獲得した相田の生態である。

 話し声が終わらない。鈴木は時計をみた。かれこれ十分はここで過ごしている。天井の配管とむき出し具合のコンクリートは清潔さと建物の新しさがかろうじて上回る。時間を流れと掃除を怠れば、廃墟にその座を奪われる。そんな事を考えつつ、股代の帰還を待った。やけに静かな相田は寝息を立てている。足音が接近、肘で相田を小突き起す。

 両手を広げた股代が帰ってきた。「すみません、ほったらかしにしてしまって。何分人手不足で」

「大変そうですね」鈴木は固く笑った。この人物は、待たせた感覚がないらしい。言葉では謝っても内面は一つも悪いと思っていない。待つことには慣れている二人だ。問題はない。

 対面に据わった股代が急に小声で言う。「そちらの刑事さんに、私と紀藤さんの関係はお話しました」

「例えばですけど」鈴木が言う。「紀藤さんには、他にお付き合いをしていた人はいたのでしょうか?あまり積極的に交友を深める性格ではなかったと聞きましたが」

「他の同僚ともプライベートな付き合いはなかったように思います。あのこれ前にも言いました」

「すいません。では、質問を変えます。お二人の関係はお二人以外で知っている人がいたでしょうか?」股代の顔が曇った。

「私は黙っていましたし、そもそも大っぴらいえるような関係ではなかったから言いませんよ、そんな誰にも」

「紀藤さんも同じ思いであったと思いますか?」

「ええ、おそらくは」

「紀藤さん以外とお付き合いをされていた女性はいらっしゃいますか?」

「はい?」

「この店の方とお付き合いがあったのかを聞いているのですよ」

「……答えなければいけませんか?」

「交友関係の把握は、紀藤さんの死の解明に直接繋がります」

「やっぱり殺されたんですね?」

「どうでしょうか。まだ何もわかりません。質問にお答えください」