コンテナガレージ

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店長はアイス  死体は痛い?3-5

 鈴木たちが食事を平らげ、食後の至福のひとときを堪能していた最中に、一人目の店員である、林道が姿を見せた。店のトレードマークであるエプロンを取り去ると、年頃の女性そのものであった。鈴木は席を移動し相田の隣に座った。アイスコーヒーを彼女の注文に便乗し刑事二人もお代わりを頼んだ。店長の股代修斗と男女の関係をもつ林道に直接、股代との関係性を聞くべきか、鈴木は迷う。とくにデリケートな問題であり、しかし事件の解明、紀藤香澄の死の真相を知る上では欠かせない、手繰り寄せた糸でもある。逃したくはない、これが本音。だが、やはりプライベートな質問は何度体験しようとも慣れない。苦手とは多少捉え方が違う。より本質的、無意識下のプログラムが行動を抑制するような感覚だろう。

 林道は相田の煙に顔をしかめた。煙草は苦手そうである。

「すいません、つい手持ち無沙汰で吸ってしまうんですよ、ははは。消します、消します」相田は掌を林道にみせて均整の取れた円形の灰皿に煙草を押し付けた。鈴木は質問を切り出す迷いが上体の前後動に現れている。トイレを我慢しているように見えたとしても弁解の余地はない。それぐらいの、緊張感が鈴木に渦巻く。

「前にも刑事さん?でしたっけ、しゃべりましたけど、今日はまた別の質問ですか?」

「別の質問というのはどういった意味でしょうか?」鈴木はしゃべりやすいように先を促す。

「紀藤さんのことではなくって、股代店長の事を聞きに来たんですよね?」さも自分の事を知っている口調で念を押すこの年代の特に女性が使用する語尾。自信のなさか、いいや視線に勢いが灯っているし、落ち着いてもいる。たんに流行りあるいは、友達間で頻繁に飛び交う状況がそうさせるのかも、鈴木は煙草の残りを確認して上着のポケットに仕舞う。店内の冷房が効きすぎているために、入店直後から上着は脱がずに着たままであった。

「ご存知の事がある、そんな口ぶりですね」