コンテナガレージ

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店長はアイス  死体は痛い?11-1

「いました、いました」店のドアを入るなり鈴木が高い声を上げた。窓に面したテーブル席に鈴木と相田が腰を落ち着ける。熊田のとなりに相田、種田の隣に鈴木が座る。冷たい水を運んだ店長に二人はアイスコーヒーを注文。水を一気に飲み干した鈴木が事のあらましをせわしなく話した。欠落した箇所は相田が面倒くさそうに一言で補う。アイスコーヒーが届くまでにおおよそ二人が置かれた状況は読み取れた。種田は眠そうに閉じかかる両目で鈴木の音声を聞いていた。

「その後、部長には連絡を取ったのか?」

「電話は繋がりませんね。部長の携帯は電源が入っていませんから、いつも」鈴木は飲み干したグラスを手に答えた。表情はこわばる。無理もない、銃撃に遭ったのだ。それも、遠距離からの狙撃。相手の姿が見えないというのは、刑事でも特殊な環境下である。白昼堂々の銃撃は警察や市民を脅かす惨状であっても、喫茶店のテレビで流れるニュースは依然として芸能人の不貞を取り上げていた。情報がまだ届いていないのかもしれない、と熊田は推測。あるいは、上層部が目を引く短絡的な情報の流失を危惧し、報道と協定を結んでいるのかも。

「外に止まっているのは、誰の車だ?借り物か?レンタカーだとナンバーが違う」熊田は三本目の煙草を吸って外に目をやる。

「あれは、借りてきたんです。……黙って」鈴木が言いづらそうに返答した。

「それはいいとして。相手のめぼしはついてるのか?」

「見当もつきません。ただ、可能性ならあります」

「どんなだ?」

「大嶋八郎のデスクの私物に未使用の湯飲みとカップが大量に保管されていました」相田が言った。

「本当か、種田」

 人形のようにぱっちり目を開けて種田は答える。「湯飲みが三つ、マグカップは五つ、グラスは二つです」

「その商品は同じ店で買われたのではと考えています」相田は確証のない意見を言う。熊田は、語尾の弱さを感じ取った。「……ただ、紀藤香澄の店でそれらを買えば、事件は店で繋がります」

「種田、湯飲みは無造作に仕舞われていたのか?」

「一つ一つ個別に箱に入っています。ですが、」種田は記憶したデータを呼びこしている。こめかみに人差し指が刺さる。「同じ店、さらにart departmentでの購入を断言するにはデータ不足です」冷静な表情にいつもの答え。