「管理官って、大声でしゃべって疲れないんですかね。抱える案件も多そうだし、エネルギーの無駄だとはおもわないのかな」鈴木はつぶやいた。
「またぁ、捜査の中止ですか?」相田はため息混じりに尋ねる。
「お前たちを監視下に置くそうだ。勝手な行動は慎め、さもなくば命の保証はない」
「死にたくはありませんね。あんなこと、もうごめんです。けど、見張られるのはやっぱり気持ちいいものじゃないです。ねえ、相田さん?」
「素直に従うのかお前は?」
「うーんと、いいえ。それは、無理です」
「決まりだな」
「命の保証はない、これは管理官の言伝だ。それでもか?」熊田は二人の決意を確かめる。
「狙われた、つまりは事件の核心に迫っている、それは時間の問題で、だから僕たちが撃たれた。隠せない証拠があるんですよ、きっと。だって時間はたっぷりあったわけですから、見られたくない何かがでーんと構えているんです」
「相田は?」
「行きますよ。署に戻っても暇なんですから」
刑事たち店を出た。会計は熊田が支払う。コーヒーを運んだ店長の姿は見えなかった。美弥都におつりをもらう。
「事件ですってね」
「ええ、まあ」
「まだ解決していないのですね」美弥都は少し笑う。
「今度は日井田さんの手を借りずに解決しそうです」
「ヒントは与えました」
「そうでしたね、自分の考えに取り入れました」猫が足元で体をこすってきた、ひとつ鳴く。「こちらの猫ですか?駐車場で良く見かけますが」
「店長が飼っている猫です。飲食店に動物はね」
「ごちそうさまでした」軽く会釈をして熊田が開けたドア、猫がするりと外に出る。開けて欲しかったんだろうか、鈴木たち時に出そびれたのかも知れない。蒸し返す運転席に乗り込み、照り返しが強い駐車場から車を動かす。夏の陽気で左手、家々の間は海の青で染まっていた。晴れない気分とは正反対の青さを憎んで、目的地に急行した。