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店長はアイス 幸福の克服1-6

 店長は好き。たぶん、これからもずっと好き。言い切れる。もちろん、心変わりも視野に入れているけど、着替えるような変化は絶対無い。本当?そう言い切れるの?ええ、だって、私はこれから永遠に私なるんだから。幸せって、そうこれも私にとっては幸せ。どこまでも永遠でそれでいて私でいられる場所。月がきれいなのも微笑んでいるように見えるのだって、わたし次第。
 淡い期待はもうやめたの。
 これからは、一生私の中でだけ生きることにする。悲観的に思わないで欲しい。あなたたちだって、狭い指向性で私を見定め、観察し、捉えているの。それを忘れないこと。誰だってひとつ。誰だってすべて。誰だってあなたで私。最後に、無意味なけじめのつけかたは決してしない。だって、これからがスタートだから。着飾ることもやり残した事もそれはどれも他人との比較でしなくてはならないと、思い込んでいるだけのことで絶対の通過儀礼ではないんだ。
 コーヒーをもう一杯買う。今度は大き目のサイズ。裏返しの本を他のお客が席の確保のために隣の一人用の席にどかそうとしていた。私の気配を感じて男女の二人組みは振り返る。先に女性が気が付いた。男に合図。何も言わずにこちらを見やる。口は単なる装飾品らしい、くだらない言葉の吐き出し口で綺麗さは微塵も感じられない。私の脇をニヤついて通過。笑い声。
 切り替える必要はない、私は思う。席に着き、冷たい液体を流し込む。大量に。読書の続き。
 それから読み終わるまで、一時間を要した。真っ盛りの夏の陽気が外と中の温度差を如実にあらわす。帰り際、ゴミ箱に買ったばかりの本を捨てた。目的地に荷物は不必要、というか持っていけないのだ。欲しかったらまた買えばいいの。店を出て外気を堪能する。居場所が見つかったらもう、行動は迅速。曖昧だったのはもしかすると行き先を決めていなかっただけなのかもしれない。ロータリーのタクシーだってバスだって電車も、目的地に向かう。私はここを離れる。後悔はない。だって、もう私は楽しくいられる。そこは私の一方的な見方をおそらく許容してくれるはずだから。
 ロータリー中央の作り笑いの花壇、安定を訴える独りよがりの選挙演説もこれで見納め。誰かのための自分のための内側でほくそえむ隠れた笑いの正体にお別れ。奪わない、奪われない世界へと。