コンテナガレージ

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店長はアイス 幸福の克服2-10

「あのう、店長、リペア対象の商品を回収に行くかなくても良いですか?お客様とのピックアップの約束に間に合いませんよ」

「林道さんもこちらにどうぞ」

「店長?」

「……」

「さあ、役者は揃いましたね。どこまで話しましたか?」

 鈴木が手を挙げて言う。「本を忘れたのはわざとって言うところです」

「そう、わざと見せ付けるために忘れた。本を印象づけるための方法。ずっと前からの計画でした、この事件は。紀藤氏のベンチに落ちた本の所在を知りえた時点でその人物は自動的に関係者よりの容疑者にならずにはいられなかった。だって、考えてもみてください。伏せていた本の所在を知ってるのはやはりおかしい、彼女もその現場にいたとしか思えない。もしもその場所でたまたま、偶然ばったり会ったとしても事情聴取の発言とは矛盾します。嘘を付いて現場を訪れていてしかも殺人に関与はしていない、していないのならはっきりと証言すべきです」

「疑われるかもしれない、と思ったのだって正当な主張」股代の覇気が収束に向かってる。隣室との境目の分厚い壁に佇む林道は状況の把握に努めている。警察の立ち回りに気後れしたのかもしれない。

「ええ、それもひとつの可能性です。現場を目撃、または犯行後の現場を目の当たりにした。怖くなって逃げたしたのでしょう。ただ、ではなぜそこで疑われるとの判断を下したのかは、腑に落ちません。咄嗟に働いた計算によって自分への疑いが頭をよぎったのでしょうか。しかし、でもそれが倫理的な一線を越えていたとしても、殺人のように罪になるようなことには繋がりません。そう、発見者は疑いを持たれること自体を恐れていたのです。身辺調査で明るみに出る隠してきたほかの事実をね」