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店長はアイス 幸福の克服2-11

「事実?」鈴木がまた声を出す。

「まだ、私が話しますか。それとも股代さん、あなたがご自身でお話しになりますか?」

「既婚者ってモテるんですよ」股代が真っ黒な声、高めの音圧を倉庫中に響かせる。「刑事さんはひとつ間違っていましたよ。私は結婚をしている、だけど付き合う相手には別居中だって話していました。鬼の居ぬまにを装ったのですうよ、妻がいないと思い込んだ間に家に連れ込み、事を起すと、それはもう盛り上がりますよ。一度体験したやめられなくってね。これがまた高まって、病み付きですよ。知ってます、そこの人だって、もうベッドの上じゃあ」

「やめてください!」林道が股代の発言を遮る。悲壮感と裏切りに落とされた表情。出口がないことは最初からわかっていたのに、でも甘いから危険だからおいしそうに見えて快楽に溺れた。その挙句が、人前で醜態をさらす。誰しもが持つその裏側は、見せないから裏側であって見せてもいい人を選ぶのが異性選択に含まれるのに彼女はそれすらを棚に上げて目先の情動に目がくらんだ。非難ではない。それなりのリスクを伴うのが現実、何事も一長一短。バレないのは、うまく隠しているか、たんに運がいいだけのこと。見ている人は見ているし、覚えてもいる。周りも許されているから自分も、などという考えはいつか必ず、破綻をきたす。男が女を好きなように女も男を好きだ、とどこかで聞いた熊田である。

「正直な発言はスムーズな進行に好影響で、大変ありがたい。いずれにせよ、あなたはそのような隠し事のために黙っていた、奥さんには知られたくはなかったのでしょう。これで事件が複雑になりました。そして、股代さんは紀藤香澄氏を殺してはいないとも行き着く」

 鈴木が質問。「じゃあ、誰が犯人だって言うんです?紀藤さんは大島さんが、大嶋さんは誰が?」

「林道さんだろうな」