コンテナガレージ

仕事(フリーライター)、日常、小説、その他諸々

店長はアイス 幸福の克服2-12

「えっ?」

「彼女は大嶋氏に声をかけた。以前から彼はこちらの店に通っていた、そして彼女は大嶋氏の想いに気が付いていた。ここでなぜ、紀藤香澄氏が邪魔になったのか。彼女はたんに股代氏と付き合いがあるだけ、既婚者の男性との。殺すまでの動機には発展しないのでは、そう疑問に思いました。大嶋氏が紀藤香澄氏の存在を消し去り、なおかつ股代に大嶋氏を殺害する自分の姿を見せることで、秘密の共有を図りました。殺人の共犯ではないけれど、事実の公表は股代自身のプライベートの公開も伴う。股代氏にとっても、紀藤香澄氏の存在は過去の女性で職場では気を使う、勝手な意見ですが、邪魔な存在です。居ない方が仕事ははかどる。それに自分は黙ってるだけ、直接手は下していないのですから、彼にもメリットは十分です。要するに、二人の利害が、時間差で林道さんの計画に巻き込まれた節はありますが、一致したために事件が二件で終わり、犯人が浮上せず、凶器も見つからなかった。紀藤香澄氏殺害の動機は明らかではありませんが、秘密の共有により壊れた関係の修復を願ったのではないでしょうか、あくまでも憶測ですが」

「……やっぱり物事は上手く運ばない、これはいつも昔からずっとつきまとうのね」林道は一歩前に出る、口を開く。「別に私は頼んでも、約束もその人とは交わしてないわ。殺しの現場を見られたのは誤算だったけど、黙っているのは、私との関係を公に知られたくなかったのよね、特に表で働く新しい彼女には」熊田はレジの女性を思い浮かべた、林道は目元に涙を浮かべる、表情は崩れても嗚咽、声は漏れない。泣かないことが唯一の抵抗のように。

 熊田は煙草に火をつけた。クーラーが空間を切り裂くように無邪気に走り回る子供みたいに稼動した。

「店長、もうそろそろ出ないと間に合いませんよ」からっと晴れた透き通ったレジの女性店員が呼んだ。店長以上の関係性を含んだ音をその場に居合わせた全員が聞いた。とぼける斜めに傾いた女性の顔が言葉が通じない動物の反応にみえた。