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店長はアイス 幸福の克服3-8

 新しい車が静かに音声をとどめてしまうぐらいに、うるささを不必要と抹消。多少の、走行音をわざと残す。ぶつからない緊急回避のシステム、死と隣り合わせがどんどん離れていく。省エネルギー、限りのある資源とは微塵も思っていない言葉だけの独り歩き。ナビゲーションと看板の表示が目的地に誘導、いつか目をつぶっても到着してしまうのだろう。どれも選択を否定している、殺したあるいは亡くなった、行動を起した彼らの方がよっぽど利己的で、理にかなって、少なくとも己に生きていたし、生きている。
 離れた場所で車にロックをかけた。機械が返答。挨拶。表情すら思い浮かべる。暖かささえ。まるで、生きているかのように。死んでいる自分をないがしろにして。死期を早める病源の摂取、煙が風で霧散。生きている私が、麻痺を体験、蝕まれ、異物を取り込む。修復で細胞の復活。死滅。
 種田を先に行かせた、彼女が建物に入る。入り口傍で、煙草を吸いきる熊田。陰の濃さが度合いを深め、すべてを黒に塗りつぶす準備。見張りの警官がチラッと熊田を盗み見る。あえて目を合わせないように取り繕った。相手に、仕草に捉われたくはなかった。鈴木の車が駐車場に姿を見せた。運転席は逆行でみえなかった。見えないのだ、見えても見えなくても見たとしても見えるかもしれないし見たくはないの、だから、だったらそう見えるように見たいものを見えてるふうにじゃなくて見つめるように見届けるべき。
 最後のひと吹きがすべて自分の顔に返った。笑える。楽しめる、たったこれだけでも。見限った自分に謝罪。雲隠れの太陽にさよならを告げて、種田の路を辿った。