コンテナガレージ

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店長はアイス エピローグ1-2

「貸しにしておきます」
「勘のいい奴が煙草の銘柄であんたの正体に行き着く場面に出くわさないよう、用心するんだな。この煙草は目立ちすぎる。もっと一般的なのに変えるべきだ」車は、葉の影が覆いつくす車道を下っていった。めずらしい銘柄、たしかに男の言うとおりだ。しかし、いまさら変えられるものでもない。いや、そう思い込んでいるだけかもしれない。運転席に乗り込む。短時間で蒸した車内。元に戻る。ただ、これは昼間のそれも日が出ている午前の話。夜だったらと思えば、状況は不変とはほど遠いだろう。今を生きるか、過去からの系譜を抱えるか、亡羊と未来を望むのか、どれかを選ぶ、究極はこの選択に戻るのだ。

 バックミーラーに映る行き止まりの道が遠ざかった。
 時を置いて部長の車は港の近辺、隣接するショッピングモールに停められた。駐車券の無料時間を確認。エレベーターに乗り、地上へ。港に降り立つ。現場は何事もなくあのベンチにも人が既に座っていた。もう一人の待ち人である。
「例のモノは?」部長はベンチの端に腰を下ろす。あくまでも他人を装う。
「回収済みよ」
「日焼けは目立つのでは?」
「休暇で海外旅行に行った事にしてあるから、大丈夫」
「もしかして海外で捨てたのか?」
「海も土の中もあいつらが本気になればどこだってしらみつぶしに調べるわ。だったら、手の届かない見つかっても共通性を見出せない場所に捨てるのが、理想的だと思ったの」
「報酬は?」
「一億」
「少なくないか?」
「そう、私にとっては十分、贅沢に暮らせる額よ。あなたは、物価の高い場所に住んでいたのね」
「さあ、どうでしょうか」
「いつ渡してくれるの?」
「いつでも。提供の方法はそちらの都合に任せる」
「じゃあ海の上でお願いするわ」
「いつ?」
「今日よ、一時間後にこの地点に」紙切れが渡される。相手が立ち去った。紙に座標が書かれてある。
 部長はライターで火をつけ、紙を灰にかえた。手元の感触が風に乗って、もう、形が失われる。もたらす力で存在も消えてしまうのか……。部長は駐車券を取り出し、残り時間を再確認。携帯で連絡を入れ、部長はショッピングモールに戻り、いつでも捨てられるように、使い捨てのライターを探した。