コンテナガレージ

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仕事(フリーライター)、日常、小説、その他諸々

あちこち、テンテン 3-1

 小川安佐は甘い香りを放つもうほとんどコーヒーの要素が希釈された飲み物を片手に、休憩から戻る。カウンターの片付け忘れた皿とグラスが目に入ると彼女は休憩時間の把握を間違えを想起、カウンター内にかかる時計に走った。
「良かった。また、休憩を自分で引き伸ばしたのかと思いましたよ」少なくとも近くには誰もいない。店主はフライパンで牛肉ときのこを炒め、国見蘭はホールでテーブルを合わせ予約席を作っていて、さらに館山ルリカは休憩に入り、姿はなかった。予測として、彼女は店主に言ったのであろう。または、百歩譲って大声の独り言。
「店長、誰かお客さんが来ていました?カウンターに人の名残があるんですよ。雑誌の取材をとうとう受けたとか。違うかぁ、取材用の料理なら残っていますもんね……」この店は一切取材拒否の決まりを設けてる。店主の意向である。知ってもらうなら遠くから足を運ぶお客よりも近隣で働き、定期的に店を訪れるお客の獲得が店の存続には有効。現にお客は一定数の獲得は上下動をはさみながらも維持している。
 店主は諭すように小川に言う。「もうすぐ四時だよ。仕事に取り掛かって」
「なんだか、パトカーが前の通りで止まってましたよ、事件かなあ」店主の話をまったく聞いていない、安佐に国見蘭が店主の発言を繰り返す。
「とっとタイムカードを押しなって。休憩時間越える」
「やばい、やばい」長方形の台紙が時計付きの機械に吸い込まて、戻ってくる。「間に合った、三時五十九分。ふう、いかんいかん。また、リルカさんにどやされる」
「その前に私がどやしてあげようか?」国見蘭がのっそり顔を近づけ耳元でささやく。
「うあああ、でたあ」
「お化けみたいに言わないでくれる。多少、顔は骨ばっているけど」自虐的な言い回しを多用するのが国見蘭の特徴である。自信のなさや確実性を常とする性格的傾向。あらかじめの突発的な攻撃への対処かもしれない、木べらで食材を炒める店主は思う。
「顔のことは言ってませんよ。距離が近すぎて驚いただけです」苦笑い、安佐はステンレスの棚に置いたサロンを腰に巻く。
「そう、ならいいんだけど。ああ、あとね予約のお客さんが四名、七時に来店するから、忘れないでね」急に畏まる口調で蘭は、厨房を出て行く。肩をすくめた安佐は今日の後半戦に取り掛かる。
「店長、私いつまで皮むきをするんですか。そのう、料理を作れるのは大体いつごろになるんでしょうか?」店主の真後ろで安佐はジャガイモの皮むきに取り掛かると、定番の文句を言う。ここ数日はいつも、休憩後に出くわすシチュエーションがこれであった。