コンテナガレージ

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仕事(フリーライター)、日常、小説、その他諸々

あちこち、テンテン 4-1

 飛び込みのお客と予約客の対応に追われ、その日は朝から休憩する暇もなく常に立ちっぱなし、三十代後半あたりから立ち仕事のきつさが身にしみて体を蝕むさまをまざまざと見せつけられている仕儀真佐子は、正午をとっくに過ぎた時刻に、十分の休憩に入った。裏の休憩室は簡易台所と一台のコンロ、それに換気扇にたたまれない折りたたみの丸テーブルに二脚の椅子で詰まる二畳ほどの広さである。タバコを吸わない若手が煙の匂いを嫌っているが、ここは私の店なのだからと、一応の説得や圧力を込めて言い含め、何とか、換気扇の下での喫煙を許されていたのだった。小窓は換気用のためのもので、空けるとビルの裏側が覗きそこからは、室外機のオンパレード。窓の用を成さないために仕方なく運転音のひどい換気扇を回して仕儀真佐子はつかの間の休息を味わっていた。

 お客の差し入れが届けられた。律儀な人である、顔を出してお礼を言う。良いのよ、と顔では言っているが、感謝の言葉はいつもまんざらでもなく受け取る人であるから、やはり褒めて欲しいのだろう。悪いとは思わない。そういう人であると認識すれば、その先を穿った見方で考えることもまた無意味。知らないほうがいい、身のためだ、ということはこの世界で生きていくための資本である。過剰な詮索は自分の世間の価値観とを最終的に比べたがる。何も考えるなとはいえないが、考えすぎるなとは言える。黙って話を受け流すこと、つまり相手の思想に触れても取り込まれたり、離れたりしないことが大切なのだ。笑顔で受け取れば、甘いものはおいしい。しかし、報酬によって得られる体験に想いをはせたり、あるいは自身をよりよく見せるためと思ってしまえば、固着した角度でしか相手を見られなくなってしまい、その結果、手技が疎か粗雑になり、摩擦の少ないほかのお客が被害をこうむる。