コンテナガレージ

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あちこち、テンテン 6-1

 宅間隆史は同僚を休憩に入れて立体駐車場の勤務をこなしていた。日の傾きを待つ静かな時間、人が流れて時たま、車が一台、二台と入ってくるのみ。忙しさとは無縁の生活。かつてはスーツを着こなし会社に勤め、この町へ通っていた。しかし、今といえば、比較すれば嫌悪感しか抱かない。嫁もわざとらしく大げさに下がったの。給料に文句のひとつも言ってくれれば多少は楽で私に居場所も与えられるのに、彼女は気を遣い、何も言わない。ただ、苦しさややりきりなさ、日々の食生活の切り詰め、衣服は去年の物を、もちろん休日の娯楽は転職してからはどこへも出かけていない。息子はかろうじて幼稚園へと通わせているが、嫁にも働いてもらっている。幸いにも、彼女は自由になる時間が持てて、アルバイトに精を出している。生活費を稼ぐためにだ。本来の姿ではないと自覚している。そんなことは重々承知だった。頭を下げた。嫁はしかし、怒りはもたない。ぶつけても来ない。仕方ない、できることをする。彼女の主張で救われた私。しかしだ、こうしてまた給料の下がった生活でも安定がもたらされると、かつての自分を思い出し、憧れてしまう。とんでもなく自分勝手な私が生きている。わかっているそれはこれは、余裕が生み出したかつての幻影で、取り合うだけ無駄というもの。戻れないと、言い聞かせてはいる。だけど、でもと再現を望む私の登場回数は頻発する。