コンテナガレージ

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仕事(フリーライター)、日常、小説、その他諸々

あちこち、テンテン 7-4

「いじめてるように見えたかい?」
「いえ、問題ありません」館山は若干涙声で感情をこらえて、続ける。「私、作ります。今日からですか明日からですか?」作るの主語は、僕がこれまでに作った店のメニューだろう。
「そうだな」店主は一拍間をおく。「明日からにしようか。ただし、そうするとランチの付け合せは作れなくなるな」
「はい、はーい」店主の後方、牛刀を持った小川安佐が天井に勇者にしか抜けないとされる剣をかざす。「私がその役目をおおせつかるというのはいかがでしょうか?」
「あんたにはまだ早いよ」口調で感情の起伏がはかれる館山は落ち着いている、心配はないだろう。
「作ってみなくちゃ、おいしいかもしれませんよ。発想はいつも斬新でないと。知らないことって結構武器になったりしますからね」店主と館山の揃った、圧力のこもった眼差しに小川はたじろぎ、顔をぎゅっと中心に集めると心境を暴露した。「ええっとはい、……受け売りです」
「じゃあ、作るだけ作ってみてよ。ただし、出勤時間は三十分早いけどね」
「うはぁっ。そうでした、早起きがあったのか」小川安佐はそっとまな板に包丁を置き、頭を抱えた。
「遠くに住んでるわけでもないのに、夜更かしするから起きれないんだ。九時の出勤なんてどうとでもなる」
「リルカさんはネットを見ないからですよ、私にとってはストレス解消であると共にカンフル剤でもあるんです。切らしたら、それこそ大遅刻も起きかねません」
「あんた、どこで働いているの。そこら辺のカフェじゃないんだよ。わかってる?」
「……わかってますよお、わかってますけど。はい、今日から禁止にします」
「館山さん、休憩だよ」店主は横道に逸れた会話から離脱。今日と念押し、作業に意識をすべて戻した。
「あの、お皿まだ拭いている途中なのですけど、じゃあ安佐、これ頼んだよ」
「私の包丁裁きは?」右手右足を開いたポーズの小川安芸。
「それが終わったら、お願いね」小川のユーモアはあっさり切り捨てられ、タイムカードを切る館山は髪をほどき休憩に入った。しまい忘れた包丁を恥ずかしく小川は、そっと店主に見つからないように本来の使用法に切り替えた。