コンテナガレージ

サブスク・日常・小説の情報を発信

あちこち、テンテン 8-2

「店長、優しいんですね?」
「僕が?なんで?教えて欲しいからその答えを言ったまでだよ。変わらないだろう、いつもと」肩をすくめた店主は再び白菜を切る。
「朝とは言い方が違いますもん。間接的に安佐へも投げかけたのかなって」
「どうだろうか。うーん、改めて思い返すと、そうとれなくもないか。まあ、僕が何を言っても本人の意識は本人にしか変えられない」
「このままでは、まずいって思ってます?」
「人のことがそんなに気になるの?」
「すいません」首を縦に振って館山は雑談、ほとんどが小川安佐の心配を店主の注意によって、われに返り、メニューの開発に戻った。
 時間が数十分経過。店内はいたって静か。揚げ餃子の餡が完成してもすぐに皮には巻かないで冷蔵庫で寝かせる。手が空き、うんと背伸びをする店主の視界に、ドアが開く光景が飛び込む。
「どうも」恭しい、低姿勢。昨日の刑事である。今日は一人。外は雨、しかし彼のスーツは雨に濡れていない。車を近くに停めているだろう。または、近隣の店で聞き込んでいたとも想像できるか。
「今日も聞き込みですか?」カウンター越しに聞いた。席に案内する義務はまったくない。お客ではないのだし、昨日の時点で知りえた情報はすべて伝達済みである。これ以上を望むのならば、それなりの理由が必要である、そう店主は思う。
「ええ、そこの駐車場でまたひとつ目撃証言が得られまして」
「はっきりと、申し上げますけど、なぜ私に話すのでしょうか?刑事ではありませんし、探偵でもない。事件に私が関わっているとお考えですか?」
「まったくそういったことは思っていません。ただ、事件をあなたなら解き明かしてくれるのではと感じたので」
 両者が沈黙。
「……警察の仕事です。私には無関係です。休憩時間ですが、仕込みの時間でもありますので、暇ではありません」
「話し方も似ている」熊田は呟く。
「お引き取りください!」館山はドアを開け外に誘導する。雨が斜めに店内に入り込む。
「異なる証言がもたらされました」館山は取り合わない熊田は言う。「死亡が確認された時刻に少女の目撃情報が寄せられました」