コンテナガレージ

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仕事(フリーライター)、日常、小説、その他諸々

あちこち、テンテン 8-6

「はい、弁解の言葉もありません」
「根拠はありませんが、現象につながりを求めるのは安易な行動で、選択肢を増やすだけのこと。そういった事実があった、その程度認識だけにとどめておくのが肝要です。後、言い残したことは、なんでしょうか。色もあまり意味はないのかと思います」
「塗料もでしょうか?」
「警察は一体何を調べているのですか?殺害した犯人を捜しているのですか?」殺害という言葉を強調して店主は諮問する。
「少女の自殺、とはまったく考えていません」
「なぜです?少女には拳銃を手に入れられないから?」
「それもありますが、大口径の拳銃です、少女が自分に銃口を向けた体勢で引き金を引けるとは思えません」
「なるほど。ですが、握力を補助するような機構を取りつければ可能です。それは、拳銃を含めたそれらの証拠品は現場からは見つかっていない、あなたの発言を尊重してみました」
「ええ、はい。薬きょうも見つかってはいません。排水溝も調べましたけれども、ありませんね」熊田は振動する携帯を上着の内ポケットから取り出す。「はい、ああ。うん、そうか。ああ、わかった」
 電話を切った熊田が話を切り上げる。「お時間を取らせて申し訳ありませんでした。そろそろ、引き上げます」
「もういらっしゃらなくて結構ですから」にこやかに店主は言う。
「ははは」熊田は苦笑い。「それではまた」
「なんですあの人。胡散臭いですね、警察というか、怪しい探偵みたい……」閉められたドアを眺めて館山が刑事への感想を述べた。二人になると、館山は口数が多くなる。沈黙を嫌うための対処だと、店主は受け止めた。大勢においては目立たないタイプの人種、少数のグループ形成に適合するだろう。店主は刑事の訪問で置き去りにされた作業に再び、着手。館山も持ち場に戻り、髪を結びなおし気合を入れる。気負いは重すぎる、普段着をさらりと着こなす感覚で取り組んで欲しい。
 刑事の訪問はほかの二人には黙っていた。仕込みの最中に眠気が襲ってきた、作業の合間に館山の考案した料理を何口も食べたからである。大幅に前倒しの食事だったことが影響したのだ。午後四時前に作るまかない料理がいつもの食事の時間。収穫は、この時間帯の食事は眠気を誘発することぐらい。眠気は体力的な側面が低下したからかもしれない。昨夜もベッドに入ったのが二時ごろ。フランス料理の文献を調べているうちに気がついたら二時を回っていて今日の体力を考慮し、慌てて眠りについたのだ。いつも睡眠に至る導入は数分で完了してしまう。それほど疲れているという見方もできる。
 眠気に堪える店主は、おもむろにパスタを作る。イタリア料理の店ではないために、専用の麺湯機もなく、大鍋に水を張って乾麺を茹で上げる。麺は業者がサンプルのために運んできた品物で、僕が取り寄せた商品ではない。否定するのは、外から見えるピザ釜が安易にイタリア料理を連想させるために、あえてそれに関する料理をなるべく提供しない方針である。