コンテナガレージ

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がちがち、バラバラ 3-2

「偶然かぁ」
「同じ屋根の下に住んでいれば、リズムはどうしても揃ってしまうものなのよ。逃れられないんだから」
 宅間の隣で、缶が音もなく合わさる。
「一軒家を手放したのは、後悔してる?」宅間は、中空に呟いた。半開きのカーテン、ベランダとうっすら室内が移る外をぼんやり物思いにふけるように遠い目で見ている。

「その話はもう終わったこと。今更、蒸し返さない」ポンと、腿に預けたことを忘れて放っておいた左手が知覚される。ああ、そこにあったんだとわからせてくれる感触と体温だ。
「憧れだったんだろう?」
「この先、一生、一軒家に住めないみたいな言い方ね」
「現実はそう甘くはないよ」
「見限ってるのはどっちよ。勝手に可能性をゼロにしないで。構えていなさい、いつなんどき、どんなところから選択肢がやってくるかわかんないんだから」
「相変わらずだ」私よりも頼もしい、この人と一緒で良かった。かみ締めはいつも上り坂で胸に刺さる。でも下り坂まで後ろから押してくれていたのを都合よく忘れて。

「なによ、じろじろ見て」見惚れていた。とがった唇がわかりやすい怒った照れの彼女の仕草。射抜くように見つめる。
「……やっぱり、おいしいなあ」視線を戻し、正面を見つめて感嘆。
「ちょっと!今のは絶対に、私を襲う雰囲気だったたでしょう?」ぐらぐら、腿から体に振動。酔いのせいかもしれない、適度に力が抜けて人形みたいに首がぐらあり、ぐらり。
「うん?なにが?」
「くそう、いつもそうやってはぐらかすんだから」
「ママぁ、うるさくて眠れない」息子が起きてきた、両手で目を擦る。パジャマの半身がめくれて肌が見えていた。妻が駆け寄り、パンツに上着の裾を入れ込む。
「ごめん、ごめん。さあ、寝ようね。……残りのビール飲んじゃってね、おやすみ」
「おやすみ」