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がちがち、バラバラ 3-3/ミステリー小説・自作小説・大人の読み物

自作小説


 テレビは蒸気機関車の大移動に密着したドキュメンタリーを放映している。これが日本であれば、興味は薄れるだろう。音をゼロから一段階上げる。見慣れない景色に人種、たまに流れる翻訳の裏の外国語、人物のものの考え方。わかろうとするだけで、解像度を下げる仕組み。おおよその把握に努める。日本ではこれが高精細のカメラを搭載、余計な部分に焦点があうと、途端に興味を失う。だから、海外のこういった映像は料金を徴収してでも多くの人間が視聴にせっせと励むのだった。
 アルコールを傾ける。少女のことが目に浮かぶ。何かしてやれなかったのかと息子の姿、声で想起されたのだろうか。
 口元の笑みは、もしかすると素直に笑えない、笑いたくない、けれど笑いを堪えられない葛藤の結果だとしたら、彼女のことを私は何一つ最後の姿を捉えていなかった。不甲斐ない自分。彼女は教えてくれた。あのときの涙と共に忘れてしまったようで、うまく思い出せない。頭を振る。いやいやをするように。そう、昔のことだ。子供は通過儀礼。私も経験していた。派手な容姿は鬱屈の現れ。最近では表現の自由と受け入れるから、驚く。奇抜さと奇妙のラインがいまいち判断しかねる。傘をぶら下げていた、あの日は終日、雨は降っていなかった。これも見つけて欲しいサインか。
 考えたところでどうなるのだ。宅間にうっすら酔いが回りだす。この方が規制がキャンセルされて想像はしやすいだろう。何を考えていたんだっけ。しばらく腕組みをして、思い出す。昼間に出会った少女だ。何か見落としてはいないだろうか、彼女の最後なのだ。身長は私の腰の辺り、百三十から百四十。靴はなにを履いていたか、映像が途切れている。いいや、塗料が垂れていたんだ。それと白、そう白いキャンバスのスニーカー。後は、ほかには、思い出せ、何かないか、映像が途切れる。まただ。ビデオテープみたいな解像度でしか再生が難しいのは、見たものを必死で捕らえようとする意識が高すぎるんだ。ありのままを再現したかった。再現が容易に行えたら、自分ももしかしたら、こんな人生を送っていなかったかもしれない。宅間はテーブルに突っ伏してしまう。そして独り言をごにょごにょと。