コンテナガレージ

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がちがち、バラバラ 5-10

「何もしないというのは、まあ、半分正解だ。ほら、ほんのすこしサイズの合わない靴を履いていると、だんだん足に馴染んでくる。靴は履くときよりも、脱ぐときに違和感が襲う。これは靴擦れを起こさない、前提で話していると先にっておこうか。小川さんから反論がありそうだからね」手を挙げかけた安佐が上げかけた手で左腕に触り、ぽりぽりと掻いた。コックコートの上からである。「靴との境界線が自然と歩行時に解消した、されたといえるね。食材の組み合わせも、なにが異質でなにが特別で、どれとの相性が最適かは過去に料理人たちがそのしるしを残している。もう、目新しさはないも同然だ。僕が作る料理も斬新さのかけらもないよ。わかっているんだそんなことは。求めているのは、この店と立地に合致する料理だ」

「やってみます」彼女は立ち直りが早い。それは折れやすいともいえる。しかし、意志は瞳に滾らせるように燃えあがっていた。やってみるがいい、それが誰のためかでサービスの質が問われる時代。自由意志は一部の奔放なスターにのみ神様とやらが気まぐれで与えたものだ。

 外を見てきた国見が血相を変えて勢い良くドアを閉める、息も絶え絶え。青ざめた顔は雨にでも打たれたように、びっしょりと汗を掻いている。小川が聞いた。

「蘭さん、汗びっしょりですよ。顔色も悪いし、震えてるじゃないですか。ちょっと」小川は駆け寄って彼女の手を取った。両肩に思いっきり力がこもって肩が異様に盛り上がった状態。唇も紫色。上下の歯がカチカチ、合わさって離れる。「熱っ。店長、蘭さん熱があります」小川は、彼女の手を取り、足取りにあわせカウンター席に座らせる。小川が脱いだコックコートを国見にかける。