コンテナガレージ

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がちがち、バラバラ 5-19

「わかりました。ご要望にはできる限りの配慮をほどこします」

「受け入れて良いのですか?」種田は冷たい目で熊田の受け入れに文句をつける。熊田は両目を軽く閉じて肩をすくめた。警察の間ではかなりポピュラーな表現手段らしい。

「ああ」熊田は一言そういうと店を後にした。不満足の種田もすぐに表情を戻し、後に続いた。店内のやりきれない空気においても店主の気分、感情は常に一定のラインを保つ。落ち込みは現状に依存し続ける空虚さそのもの。僕は変化をいとわない。午後の営業を頭に入れて、組み立てようか。うん。うなる。手を叩く。周りが注目。気にしない。ケータリングは好評なので鶏肉を仕入れよう、後はなにを対抗馬にすえるかが肝だ。鶏肉は脂身も少なく、カロリー控えめでもたれにくい。秋ごろ、明日の天気は?事実上の営業停止を余儀なくされた店主はポケットから普段はその使用を滅多に垣間見ることのない、化石と称される数世代前の端末を指先で操る。店長って持っていたんだ、という感嘆の声も耳を素通り。予期していた反応ならば対処は既にお手の物。明日は雨が降る予報、降水確率は六十パーセント、ほぼ雨である。そうすると、気温もぐっと下がるだろう。二十度を下回る、正午前後の気温はおおよそ最高気温と見ていい。スープを夏場で疲弊した体が求めるかもしれない。明日もまた実験だ。その連続。答えはないのだろう。そのつどスタイルを変えていれば、過去にとらわれる無駄な労力を請うことこそ考えにも浮かばない。無意味だ。季節も移り、人も気温さえ虫だって登場をわきまえてる。人だけ。つねに過去を見返し、キャンセルでことをなそうするのは。それらのキャンセルが生み出す余った容量は毎週録画の番組の視聴、日々付きまとう近しい人々との短い意思の疎通など、所有と意思の交換に費やすのだから、取り合うことがいかに無駄をはらんでいるか。

 警察が数十分後には店内、表、裏と各所に散らばり白手袋が大勢通り過ぎる。ホール内もくまなく捜索の対象、調べられた。厨房は殺傷能力の高い凶器の宝庫。しかし、今回の事件は銃創、つまり拳銃を探している。隠し場所はほとんどない。カウンター上部の天井から下がるつり棚も重なる皿でひしめく、拳銃を隠すスペースは見当たらない。物の数分で捜査員たちは見切りをつけ何事もなく、また協力の挨拶もせずにホールの捜索に加わった。しかし、もちろんホールだって何も出てこなかった。

 店主は表に出る。黄色のテープは通りをまだ封鎖していた。ご近所には迷惑だが、店の前だけに進入禁止のテープが張られなかったことは幸いと喜ぶべきだろうか。いや、噂は短時間で伝達する。やはり、人が他人に伝える動機の根本は有益な場を握る自分の価値を高めたく、しかしそれは無意識に行われてる。話したい、という欲求に隠蔽、表向きは意識を共有。ただし、そこには情報のアウトプットも絡む。相手にもれなく伝えることは情報の精査に最適なのだ。また、本心で相手のためを想い、またはかつてにおわせた趣向に関連する事項の新情報をただ教えたい人物はまれにではあるが、いないこともない。大概が前者だろう。うまく使い分けている人も中にはいる。とにかく、広まる噂に対抗するすべはない、これが結論だ。店は無関係である内容の噂を流してみるか……。店主は、ぼんやりと店構えを仰ぎ見て考えていた。外は秋晴れ。冬も天が高いのに秋にばかりフォーカスがあってる。自動的な焦点だ。