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がちがち、バラバラ 6-6

「水鉄砲が見当たらない、それはつまり少女が持っていなかったのではありませんか。私は見たものは水鉄砲のではなかった」
「液体を貯めておける形状の所持品は発見されてないのです」残念そうに力なく熊田は応える。
「警察は少女がもともと持っていなかったとはお考えにならなかったのでしょうか。水掛け論になりますけど、証拠品の採取だって店の窓はまだ調べていないのでは?私の証言に食い違いが見られる、その一点を突いた捜査は腑に落ちません。防犯カメラは信用して、落としきれない窓の液体を調べない、これはどうご説明なさるんでしょうか?」仕儀は語気を強める口調で刑事たち、捜査の不振な箇所を指摘した。
「液体がいつかけられたのかを示す要因を現在の技術では解明できません。目撃者に協力してもらうと、窓の汚れは少女がかけたことになりうるのです。通行人もひっきりなしに道を歩いてはいない、数秒この店を見ていない場面が生まれる。その一瞬に取り出した液体をあなたなり、店の従業員なりがかけてしまえれば、もう、そこには汚れ。少女は現れたのかもしれない、しかし、あなたがおっしゃるように液体を少女がかける行動をとったかどうかは、不確定」種田は遠慮なく、仕儀に偽証の可能性を示唆する。
「わからないのなら、あえてまた私に聞くことが無意味のように思えます。顔色で真偽をはかろうとしているのでしたら、多分私は嘘をついていてもわからないでしょう。そういう本心を表に出さない商売です。絶対に私は嘘はついていませんけどね」
「そうですか」熊田はわざとらしく納得したように腿を叩き、言う。「もうひとつ、少女の服装についてですが、緑のコートを着ていたとおっしゃいましたけど、見間違いではありませんか?」
「緑です。コートを脱いだのかもしれない」
「ですが、まだコートを着るような気温ではありません」
「そうですね。ただ、私は見たままをお話しているので……」仕儀は腕時計を見て時間を確かめる、はずしてポケットに入れた。一旦細かい髪の毛が時計に張り付くどうにも掃除が面倒なので、仕事前に必ず時計をはずしているのだ。
「お子さんはお元気ですか?」
「……」種田の問いに頭が真っ白にかわる。「私は独身です」かろうじて返答、声はかすれていた。
「独身でも子供は産めます」