コンテナガレージ

仕事(フリーライター)、日常、小説、その他諸々

がちがち、バラバラ 7-2

「お店って、やってますか?」宅間が聞いた。頭上では鈴が鳴り終わる。短い出迎え、ドアを途中で止めているからか。がらんとした店内を窺っていると、奥から先ほど話した店員が出てくる。
「すみません。今日は夜からの営業のみとなっておりまして、ああ、先ほどの」気づいたようだ。表情は仕事の追われた表情よりいくらか明るく好意的といえる。宅間は思い切って提案する。
「お店で食事を摂らせてもらうことは無理でしょうか。そのすぐに帰りますので」なぜ宅間がこれほどこの店にこだわりを見せるのかは正直理解に苦しむ。突き動かす衝動のようなものは丹念探るけれども、うん、その生態を見極めるには情報不足と考えた。断られて当然。そういった気概が積極性を生むのかもと思うが、失敗を予定に入れ込む心理にはやはり同意しかねる。
「仕込んだ食材はもうないんです。テイクアウトも予定より早めに切り上げたのは、売れ行きが好調だったからなんです」
「感想と料金、すぐにお帰りなると約束してくれるのであれば、おつくりしますよ。ただし、メニューの指定は受け付けません」厨房にいつの間にか人が立っていた。
 店員が小声で言う。「店長、私休憩ですよ」
「いいよいって来て。お客さんは僕が接客するから」僕と言う表現に多少違和感を覚えたが、自分を僕と呼ぶ人は思い返すと割り合い、高い比率で存在する。
「じゃあ、こちらの席へどうぞ。お水、只今お持ちしますね」
「ありがとう」店員は水とお絞りをテーブルに並べると、エプロンを取り去り、店主に挨拶をして出て行った。店内はうっすらと音楽が流れる。ほかの音は厨房から聞こえる摩擦音。重なる皿の隙間から店主の様子を宅間は覗く。寡黙である店主は、一切話しかけてこない。自分と似たタイプだ、宅間は自覚した。
 料理を待つ時間はまったく宅間には苦にならなかった。それどころか、昨日出来事を店主に話しかける気分の高まりを抑えていた。珍しい現象。人気のない店内がそうさせるのかも。誰もいない放課後の学校の心地よさだろう。
「グラタン」両手に顎を乗せた状態の宅間は、店主の言葉を聞き流してしまう。
「食べられませんか?」薄い木の板を下に敷き熱を発する器が置かれた。チーズの焼き目、食欲をそそる香りだ。
 慌てて声を出す。「大丈夫です、食べられます」大丈夫。汎用性のある言葉だと改めて思う。否定にもなれば今のように肯定でも使用可能。言い方の違いと、仕草と明確な態度で相手は判断するしかなくなる。食べられると言葉を添えたので誤った取り方はしないだろう。音もなく店主はカウンターへ。