コンテナガレージ

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がちがち、バラバラ 8-1

「カフェの店員の証言は、事件時に常連客が窓際の席に座っていた、とのことです」助手席の種田は抱えていた質問をぶつけた。「管轄外の捜査はもう手を引いたほうが賢明だと思います」
「署に帰って電話番をしているのか?」気温が上がる車内、クーラーは停止、窓を開けて風の通過で温度を調節する熊田である。
「付き合います」
「証言の半分が食い違っている、S署も困惑していた」
「はっきりとした服装を見間違えるというのは、考えにくいです。共通のワードは塗料」

「聞いていなかったが、どうして目撃者の名前がわかったんだ。店員はその人物と顔見知りだったのか?」熊田は信号で減速、横断歩道をみて、種田に尋ねた。
「名刺を置いていったようで、ナンパですね」
「男か」
「ほぼ毎日店を訪れるそうです。執筆活動が仕事、名刺には書かれてありました。名前は三神、苗字だけです」
ペンネームか?」
「おそらくは。丁寧に携帯の連絡先も書いていました。出版社や仕事関係に渡してるのでしょう」
「待ち合わせ場所を指定するのは、引っかかる」熊田は青信号で進む。
「作家ならば打ち合わせや資料集め、参考となる景色や風景、建造物を直接観察することもあるのではないですかね」
「そういった関係者は警察と聞くだけで、不用意に会ったりはしない」
「メリットが見込める。つまり、要求があちらにもあるのかもしれません」
「そう考えるのが妥当だろうな」
「不服ですか?」
「タバコを吸えない車内に不服だ」
「交渉は挑む以前に決裂しています」
「それは決裂とは言わない」