コンテナガレージ

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がちがち、バラバラ 8-6

 
 いないか、まだ店内にいるのかもしれない。
 次に発車する送迎バスの時刻をバス停で確かめ、車に引き返した。
 種田は、どの出口からでも出て行けるように駐車場内をぐるぐる周回、車へ熊田は手を振った。
 今度は正面の右手に停車、この角度であれば入り口はばっちり見える、相手からも。
「三神は?」
「中か、もう外へ出たか。わからん」
「彼を追う必要はありますかね。呼びかけには素直に応じました」
「彼の答えはわざと嘘の事実をこちらに伝えた」熊田は助手席に座る。
「憶測の域を出ません」種田がぴしゃりと指摘する。
「ショッピングモールに部屋から直接来たとは思えない」
「どうしてですか?」
「女じゃないからさ。買い物を日程の第一候補に上げるのは女だ」
「偏見です。それに、店の混雑が好ましいと言っていました」
「聞いてたのか?」
「声が大きかったので」
「混雑なら自宅マンションの近くにいくらでもあった。環境をリセットした中で仕事をしたかったと考えなくもないが、環境の変化は一新された気分、一過性であり、そこに至る時間を含むと、近場で点々としたほうが効率的だ」
 種田が話し始める口元の開きかけに、三神が出入り口へ姿を現した。左右にしきりに注意を向けている。熊田は腰をスライドさせ、身を隠す。隣の種田も、起用に身を屈めた。黒のバンが滑り込み、発進。三神の姿は消えている。三神はそれに乗り込んだと確信。ナンバーの記憶は種田に任せる。
「種田、場所を代われ」種田はドアから外へ、そして後部座席に移動。熊田は車内で運転席に映り込んだ。フロントガラスの視界をバンは左から右に通過、道路に出ようとしている。「ナンバーの照会だ」
 逃げるようなスピードの急発進がなかったためにバンには、道路に出てすぐの信号で追いついた。