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がちがち、バラバラ 9-2

「また警察に尋問される。どう応えるのが正解かな?」

「ご自由にどうぞ。私たちのことを友人でも知人でも結婚式にだけ呼びつける遠い親戚でも何でも構わないわ。もちろん、ネタの提供と打ち明けても問題はないでしょうね。すべてはあなたが決めて。考えるほどに選択肢はおのずと限られてくる」

「その場を切り抜けて、そっちはどうする?追跡は振り切れないと思うけど」

「こちらから出迎える」

「正気か?」

「気が触れてたら、宣言はしないわ」

 それからバンの走行は三十分ほど市内中心部へ向った。女性は思い出したように運転手に地下鉄入り口で車を止めさせた。目配せ、私に降りろと合図が送られる、仕方なく降りた。現場から刑事たちを離すという言葉を反芻していたが、状況を完璧に補完する解説は見当たらなかった。バンが走り去る。黒い乗用車が三神の足の先に前輪に合わせて止まる。後続車がなにやら文句を立てて、クラクションを短く鳴らしたが、後部座席から降りた種田の警察手帳がその反応を即座に収束させる。車は走り去る、追いかけるのだろう、三神は車を降りた種田に相対する。愛想笑いはやめる、好印象をもたれる時期は過ぎた。

「どうも、刑事さん。僕の後を追いかけていたんですね。訊きそびれたことがありましたか?」

「どなたと乗っていたのですか?」威圧的というよりかは、取引相手の女性と似通った気配だ。三神はにやけてしまう。「ジョークをいったつもりはありませんが」

「失礼。これはその事件とは無関係では?プライベートに警察が踏み込む許可をもらっていると聞かされてない」

「お知り合いと解釈します。関係性は?同乗者は何人です?」

「ちょっと、こんなところで人がいますし」種田はがっしりと三神を腕を素早く逃走を予見し、掴む。地下鉄の入り口、当然人はひっきりなしに出入り。

「時間がありません。お答えください」

「あの人たちは僕のファンですよ。バスで来たといいましたよね、次のシャトルバスまでの時間を確かめようと時刻表を見に外に出たときに、車が止まって声をかけられたんですよ。何度かサイン会で見た顔で僕も相手の名前までは知りませんけど、ええ、行き先を聞かれたので、だったら乗りませんかと、その誘いに乗ったと言うわけです。読者との交流は出版者が絡んだ機会で行うのが筋で、熱狂的な読者が僕との偶然の出会いをネットの交流サイトに書き込む心配はできれば考えたくない。これは出版社の意見ですけど。そういったファンは簡単に手のひらを返した中傷の書き込んでしまう傾向を持つみたいで、本の売れ行きに影響が及ぶらしい。本は前回の出版された本の評価で次回作が買われるのですから、もっともなことです」

「好都合な回答を用意しましたね。上出来です」

「刑事さんが皮肉ですか、似合いませんね」睨み合い。

「女だからでしょうか?」

「僕のタイプだからです」

 種田は沈黙。「ご協力感謝します」種田は背を向けて、手を上げてタクシーを止めようとする。