コンテナガレージ

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仕事(フリーライター)、日常、小説、その他諸々

ゆるゆる、ホロホロ1-1

 店舗裏における捜査は夕刻をもち、捜査員が緩慢な作業で引き上げ準備を行っているのを小川安佐が店主に伝えた。彼女は長めの休憩から戻るやいなや、早口で風雲急を有する事態が起こったかのような口ぶりであったが、夕方を過ぎた時間帯でもう七時を回ったために、この店の通常のお客の入りでは既に客席埋まっているころである。十時に店を閉める、お客の入りはそれに合わせて近隣の店よりも早い。この時間に店が開いてないとお客はおそらくは訪れないだろう、店主は小川のしゃべりを半分だけ受け止めた。ガラス窓に数人の紺色の制服が遠ざかっていく。

 ベルが鳴った。「あっ、どうも。捜査はこれで終わりです。裏手は進入禁止にしてありますので、ご理解ください」小柄な男が帽子を取って挨拶をした。

「営業の再開はいつからでしょうか?」店主は小柄な男にきいた。

「証拠品は採取、回収済みですので現在から再開されて大丈夫です」

「わかりました、ご苦労様です」

「いいえ、こちらこそ、営業の邪魔をずいぶんしてしまったようで。それでは私はこれで失礼いたします」

「どうも」

「やけに低姿勢な警察ですね。ああいうのを物腰が柔らかいって言うんですかね。私には無理だと思うなあ」厨房に入りサロンを腰に巻く小川が呟いた。

 明日のランチは、肉料理を控えてみようか。店主は警察がドアを閉めると同時に顎に手を当てて一点を見つめた。気温はまだ温暖さを残してる、明日も曇り空ではあるが気温が大幅に下がらない予報である。あっさりとしてテイクアウトにも適した料理か……。

「もう、店長。私の話し聞こえてないんですね、そういうのって嫌われますよ?」

「何か言ったかい?」店主は仁王立ちの小川を見つめる。

「今はお客もいないし、二人だけってことですよ」

「ああ、礼儀正しい警察もいるってことだよね」

「聞こえてるなら応えてください!」

「必要だったかな?」

「当然です」怒りと喜びのスイッチを切り替えて小川が言う。「そうそう、警察の捜査、あんまり進んでいないみたいですね」

「警察の関係者から聞きだしたの?」

「隣近所の店員さんとばったり近くのカフェで、情報を交換したんです」

「あんまりうちのことを言いふらさないでよ。君はへんに話を膨らませる」

「心配は無用。聞き役に徹しましたから」小川はそこで息を吐く。「警察は事件発生前後のアリバイと不審者の目撃の二つを主に聞いていたようですね。まあ、みんな働いている時間ですから店を抜け出してことを起こそうっていうのは現実的じゃありません。店の制服なりユニフォームで衝動的でも、連続して事件は起こしません」

「二つの事件は同一犯とは考えていないの?」店主は言う。

「大胆すぎますよ、まだ警察がその辺で捜査をしていたんです。捕まらないように距離をとる、逃げるのが鉄則です」

「けれど、僕たちみたいに進入禁止区域に出入りが可能な人なら、容易に裏手に行けたはずだ。警察に呼び止められても、わき道は繋がって一本前の通りに出られるし、近道という言い訳も成立する」