コンテナガレージ

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ゆるゆる、ホロホロ1-3

「こんな時間まで捜査ですか、管轄外の方が?」二人の刑事はしっとりと汗をかいている。

「まあ、はい。お邪魔でしたか?」

「ご覧の通り、仕事はしていません」

 熊田は手を広げた。「少しお時間を、よろしいでしょうか。事件についてです」テーブル席に案内した、冷蔵庫から瓶のソーダを二本を掴み、グラスも二つ、長方形クリーム色のトレーにのせ、二人に提供する。栓を空ける前に飲むかどうか意志を確認し、栓を開封。灰皿とタバコを取りにカウンターに戻り店主が席に着いた。

「亡くなった子は二人とも面識はなく、小学校は近隣でしたが、学校同士の交流はありません。ランダムに選ばれたと考えています」熊田はグラスを使用せず直接瓶を傾けた。その前に空中で手套を切る。

「検証や考察ならば警察で行って欲しいものです」外側に煙を吐く動作を咄嗟にとってしまう自分を哀れむも店主は如才なく主張を述べる。煙を吐くタイミングとはずした目線が重要。

「周辺の店に勤務する人はこちらをよく利用されるそうですね。店の中で事件に関する話題を聞かれたことはあるでしょうか?」

「ええ、一件目の後には」

「内容を覚えてますか?」

「私が聞いたのでなく、従業員が聞いた話でよければ」

「お願いします」店主は、近隣の美容室の集まりの会話を反芻するように刑事たちに話した。

 稼動をやめた店主は煙を吸って吐き出した。種田という女性刑事は沈黙が通常の態度。サイダーの炭酸を瞳は見つめている。短い髪は、女性像への反発とも受け取れる。なんとなくそんな気がした。自分のことをきれいとは思ってはない部類の人種だ。切りそろえられた前髪は、洗練よりも野暮ったさが印象。

「……自らを見つめなおす、そういった投げかけは他でも聞きました」熊田が店主の証言を受けて、切り出す。「しかし、その人物は自分の声で少女が話しているように思ったと、言っています」

「正気を失っていたのでは?」その人物とはおしゃべりな常連客のことだろう。

「可能性は高いです。ただ、なにぶん目撃者が見つからないので、どうにも真偽を確かめるすべがない状況でして。まあ、証言の信憑性も科学捜査に基づいた裏づけによる反証をつぶしているだけであって、証言は真実かもしれない。目撃は不確定な第三者の偶然とも言われる」

「もうひとつ別の作用があります」種田が椅子をテーブルに寄せる。「補完される」

「なにがだ?」熊田が尋ねる。