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ゆるゆる、ホロホロ2-3

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 亡くなった子は本当に現実に存在してあなたに会いに来たの?あなたが作り出した幻なんじゃないの?
 ……あいまいで宙ぶらりんでも私は生きてゆける。明確な答えはこの際突き詰めたりはしない。
 それは前のあなた。
 ちがう、取り合わないと決めた。
 殺人事件かもしれない。
 殺したのは私かもしれない、そういいたいの?
 あなたの態度ではね。
 だから警察が尋ねてきたんだ。
 今頃気がついたんだ、能天気。
 私は店を離れていない。
 それを言っているのはあなただけ。他の人は黙っているのかもしれないわ。
 何のために?
 保身のためよ、被害を受けないため。
 傘に降り注ぐ雨音、雨量が増したために振動が右手から伝わる。私は塗れた路面を確かめるように足を進めた。
 店の前には開店を待つお客には到底見間違えない刑事が待ち構えていた。ビニール傘に仲良く二人納まっている。
「あら、刑事さん。どうされました、こんな朝早くから」時間は午前九時を少し回ったところ。
「気になる点をあなたに伺いたくて、朝早くから押しかけました」熊田という刑事がジェントルな声で訪問の理由を述べた。刑事が朝からそれも雨の中、待っていた事実から推測すると、あまり私にとっては好意的な訪問には受け取れない。仕儀は傘を折りたたんで二人を中に入れた。出勤時の雑務をこなしながら話をして欲しいと店に入った時、刑事に伝え、照明などの電源を入れる。ドライヤーなどの故障は朝一に起こることが多い。また、こういった電化製品は購入時期や製造時期が同じであると、一台の故障に連動して壊れる現象が過去に何度も見られたので、ストックは現時点の使用同数を引き出しに確保していた。ドライヤーの音が聞こえなくなると刑事が質問した。
「お借りした名簿から少女の名前が見つかりました。ご存じなかったようですね、先月の来店です」
 仕儀は聞こえていたが、わざと聞き返す。「先月ですか?」
「ええ、母親と一緒に来店してます、確認も取りました」熊田は苗字を告げる。ああ、とわざとらしく仕儀は声を漏らす。気がついていたが、あえて警察に話さなかった。聞かれたならば、打ち明けることは厭わないようにと決めていた。