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ゆるゆる、ホロホロ5-2

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 明日は定休日。久しぶりに、ドライブをしたくなった。目的地はどこにしようか、自宅を目的地に設定すれば、どこへ行こうと家には帰れるか。

「店長着替えるの早いですね。マジックみたい。あれは女の人が変わるのか」着替えた小川は一人で話し一人で納得。

「なにをひとりで」上着のジッパーを上げていた館山が前の小川にぶつかる。「ちょっと通路で止まらないで」

「店長が一緒に出るのって久しぶりか、初めてかも。ああ、明日の休み、どこかへ行く予定ですね。彼女ですか、それとも婚約ですか、もしかして不倫相手と密会とか」

「黙って進め、おこちゃま」

「乗り遅れる」一番後ろで国見が足踏み、右手の時計を覗く。

「電気を消すよ」消灯、明かりを失った店内はちょっとさびしげにみえたのだって、たんなる明るさとの比較だ。今日が終わる。ぞろぞろと歩く従業員の三人を先に送り出す。お客の話に登場した女性は先を見据えたのだ。答えとは一様ではなくて多様性に溢れている。知ったら最後、後には引けない。試してみない。たが、試したら引き返す退路は断たれる。普通ならば怖くて足は踏み出さないのに。店主は通りを眺めた、街灯が取りきれないフロントガラスのかけらを照らしていた。昼間ではわからなかった、こまかな粒が撤去された車と連行される人を重なり合った。

「乗り遅れちゃいまーすうよーお」

 小川の呼び声に応えて店主は、通りを去った。月がちょうどビルの谷間にぽっかり浮いていた。