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空気には粘りがある4-2

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 「休憩をキチンと取らないと神経を使う仕事ですのでどうしても午後からの治療に影響してしまうんです」

 「はい」

 「休憩のときは仮眠を取るので、途中で起されたくはないんです。そちらも仕事でしょうがこちらも同じです。もちろん、従業員が亡くなったことは重く受け止めて知りえた事実を話すべきだと自負していますが、他の患者さんには無関係なので、それを理由に治療のパフォーマンスを落とすわけにはいきません」院長は、鈴木はクリニック近くで時間をつぶしているのだと思っていたようだ。彼の言う事もわからないではない。行動はすべて患者にある。そこから派生しての発言だろう。ただし、落ち度はあって、院長は休憩時間の指定できていなかった。状況によって変わるとは思うがだいたいの予想や院長であるという利点を利用して他の者に休憩時間を変わってもらうことも出来たはずである。院長は明るみだしたくはない事実をなにか隠しているのかもしれない。だから、わざと会えない理由を作っている。しかし、これらはあくまでもこれは鈴木の予想。

  「そういわれても、こちらも何時に到着するのか、正確には分かりません」鈴木の怯えた声に行き過ぎた言葉の羅列に院長は反省をこめる。

 「……私も少しいい過ぎました。申し訳ありません、いえねえ、忙しくてそこに輪をかけて早手さんが亡くなりましたから、人員の補給も急がないと受付は休みが取れない状態でして混乱しています」

 「そんな、ただこちらは早手さんの情報が得られればと思っているだけです、事件であれば被害が広がらないように対策を講じる必要も発せしますから」

 「分かりました」電話口から吐息が吐き出される。「4時に休憩をずらしてみます」

 「はい、それならば十分に間に合うと思います」

 「じゃあ、4時に」

 「はい、失礼します」鈴木は取り付けた約束の破棄を免れ、急いで車をクリニックへと向けて再始動させた。止まっていたエンジンは冷えている。それでも、バッテリィーで稼動する様々な車内の数字や窓、エアコンは停車の間もまったくその機能を止めることなく待機を命じられたまま、次の動き出しをまっていた。

 クリニックには当然4時前に到着した鈴木である。こんなときにばかり道路はスムーズでとても快調に車は進路の遮りを拒まれない。渋滞を嫌いながらの走行はもしかすると渋滞をこちらから呼んでいるのかもと鈴木は考えてみる。つまり、取り去りたい渋滞の映像を脳内で再生したものを消し去ろうとするから、明確に描いた映像を消し去れないで残り、それが現実とリンクする。