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摩擦係数と荷重8-2

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「一丁は本物ですね、薬莢も現場に落ちていましたし」映像を眺めて確かめるように山崎は言った。何も言わないよりははっきりとしている事実を繰り返すだけでも会話を繋ぎ止めたいのだろうか。
「他の2つは、モデルガンでも本物だと思うだろうな、この状況では」モニターに映し出された映像は倍速で流れている。また、強盗が突入するシーンに差し掛かる。入り口の映像からはどうやら犯人は自動ドアの直前で顔にマスクをはめているようだ。前に一人、後方に二人の体制で入室する。「おい、銀行周辺の監視カメラは調べたんだよな?」椅子に足を載せていたく相田がむくっと起き上がる。
「ええ、そうですよ。でも、最有力だった通りや斜向かいのコンビニのカメラもちょうど銀行の入り口が映らない画角で切れていたんです」
「……犯人はすると、銀行から見て左手から入ったことになるな」
「はい、まさか空から降ってくるわけでもないですしね」相田は山崎の冗談を無視して真剣に話を続ける。
「逃走用の車を用意していたのならどこにそれを置いていたかだ」
「路駐でしょう」
「反対車線には置かない」 
「まぁ、そうですね」
 監視室のドアが乱暴に開かれると、息を切らせて捜査員がいった。「逃走車両らしき車が発見されたそうだ」
「場所は?」足を降ろして相田が間髪を容れずに聞く。
「S駅近くの立体駐車場」
「よくそんな離れた場所で見つかりましたね。あれっ?車のナンバーや車種は?そもそも車に乗っているのかもわかっていなかったですよね?」山崎は首を傾げた。
「車にバッグが一つだけ残されていて、しかも乗り捨てられた車のドアに1万円札が挟まっていたんだよ。駐車場の管理人が見まわりで発見したらしい」相当急いだ様子が伺える。
「それだけで強盗犯の逃走車両とわかるか?」
「ラジオかテレビでニュースを聞いたのでしょう、お札が見えてそれでピンときたとか」
「ちょっとうますぎるな」
「へえー、たまたま調べたらってやつですね。でも、バッグぐらい持って逃げられますよね?」残されたバッグの不信な残し方を山崎は指摘する。銀行では証拠を残さなかった犯人たちがここへきて、そんなミスを犯すだろうか相田は不信感を抱くと新たな説も即座に浮かぶ。