コンテナガレージ

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摩擦係数と荷重9-2

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「いえ、そういうわけでは」
「事件はまだ終わらないような気がするな……」
「それは予測ですか、それとも勘ですか?」種田は熊田を覗くようにみる。
「さあ、なぁ。どっちでも同じだと思うけど」
「予測はデータ。あくまでも観測された機械、機器からの情報を元に算出され得たもので、勘は実体験に基づく予感です。感じるのですよ、測るのではなくて」
「測るねえ」
「納得できませんか?」種田の問いに答える前にドアが空いて担当者が戻ってきた。
「おまたせしました。こちらがご指定日の施錠時間です」手渡された紙には横軸に時間、縦軸にはどのキーが使用されたかが示されている。
「アートプロジェクトの鍵はドアを開けるとホテルのオーロックのようにドアは自然と閉まって施錠されますか?」熊田が紙を見たままで質問する。
「ええ、ただ、ドアに取り付けられた装置に振り当てられた暗証番号の後に特殊な入力をしていただくと一定時間は解錠されたままになります」
「その間の記録は?」種田に紙を渡して熊田の声が一段と低くなる。なにかひっかかることでもあるのだろうか。
「もちろん、記録されますよ。それに、記録にははっきりと解除と施錠の時間が長いことでも明らかです」担当者の男が言うには、施錠の有無は電子ロックで構成されている。しかも、解錠にはカードキーが必要であるとのこと。また、緊急用に普段我々が使い慣れているタイプの鍵でも開けられる仕組みである。種田は、屋根田が会社のドアを閉めた時間を気にかける熊田の心理を測れずにいた。そもそも、早手美咲が屋根田の会社を出てすぐに屋根田も会社を出たと証言している。熊田は何を気にしているだろうか。一連の事件もしくは一件目の事件は二人の共犯であった可能性を示唆するものなのか。共犯であるならば、アリバイ作りには共謀した二人が互いの所在を証明すれば一応は成立する。早手美咲もレンタカーで高速を利用していた。アートプロジェクトに行っていなくても現場近くまで来ていたのは事実である。